Chapter 13-6
レイシア「ロエンよ、ロエン」
アルム「ロエン?ひょっとして…また手合わせ?」
レイシア「大正解よ」
レイシアは自身の武器である鉤爪をくるくると回しながら言った。
アルム「嫌なの?」
レイシア「まさか!むしろ嬉しいわよ」
アルム「じゃあなんでさっきため息ついてたの?」
レイシア「ロエンとの手合わせは嬉しいわ。だけど、セリスとアンナが反対してるのよ…私たちが戦うことに」
レイシアは残念そうに俯く。
アルム「聞いてばっかりだけど…なんで2人は反対するの?」
レイシア「仲間で手合わせするのは構わないけれど、決まった相手とだけっていうところが不満みたいなの。2人が手合わせをお願いしても、ロエンは断ったらしくて…」
アルム「断ったの?」
レイシア「そう聞いたわ。とにかく、私と戦いたいんだって。もちろん私は全力で相手するけどね」
まだ戦うわけではないのに、更に言えばロエンとの手合わせでは使わないのに、鉤爪を右手にしっかりと填めて何度か突きの動作をするレイシア。その自信に満ちた表情には、不安の色は一切ない。
アルム「レイシアは…ロエンとやって、負けたことないの?」
レイシア「ない…わね。今まで何十回もやってきたけど、全部私が勝ってるわ」
アルム「だったらちょっとぐらい…」
レイシア「アルム、私は絶対に手を抜かないわ。手抜きの私に勝ったって、ロエンは嬉しくないはずだもの」
アルム「そっか…そうだよね。レイシア、頑張ってね」
レイシア「うん、もちろん。明日も負けないわ」
笑顔で答える彼女を見て、アルムは密かに(レイシアに勝てる人っているのかな?)と考えた。もちろん、それを表には出さないが。
そして、この部屋のドアのすぐ外。
ロエン「手抜きのレイシアに勝ったって、か…ほんと、その通りなんだよね…。でも…僕は…」
ロエンはそう言ったきり、口をつぐんだ。そして、自らの寝床へと戻っていった。