Chapter 13-4
セリス「…で、あれは俺が10歳ぐらいの時だったかな…。島に、めちゃくちゃ強い台風が直撃したんだ」
レイシア「…それじゃあ…!」
セリス「ああ、畑も田んぼも全部パーだ。どこの家も少しは蓄えがあったから、それで何とかしてたみたいだけど、俺んとこに蓄えは無かったんだ。いつもならみんな分けてくれるんだけど、その時ばっかりはな…。みんなも、他のヤツに食い物を分ける余裕なんか無かったんだろうな」

何だか予想外の話になってきた。が、レイシアのこと、続きが気になって仕方がなかった。

レイシア「…それから、セリスはどうしたの?」
セリス「魚を捕まえて食ってたよ。でも、もちろん捕れない日もあったからな、あの1年は辛かったぜ、満腹になったことがなかったからな。けど、自分で掴み取らなきゃ、何も出やしない。本当…辛かったぜ」
レイシア「…そんな過去があったのね」
セリス「そん時、誓ったんだよな。食べ物は食える時に食っとく。出された食べ物は残さず食うって。島のみんなのこと考えてたら、罰当たりな気がして落ち着かねーんだ」

そこまで言うと、セリスはふう、と息をつき、「これでいいか?」と付け加えた。

レイシア「ありがとう、よく分かったわ。私、そんなこと考えたことも無かった。ちょっと食べ物に対する考えが変わったわ」
セリス「そうか、そりゃ何よりだ。まあ、とにかく俺が飯を残す可能性は、お前が1週間俺を一度も殴らないそれと同じくらいってとこだな」

ほんの冗談のつもりで、セリスは笑った。レイシアは怒るではなく、安心していた。こういう冗談が飛び出すのは、いつものセリスと変わらないということだから。

それでも、頭の切れる彼女は笑い返してこう言った。

レイシア「そうね、それじゃセリスが食べ残す可能性がゼロであり続けるように、毎日1回殴ることにするわね」
セリス「…は?いや、そういう意味で言ったんじゃねーって!つーか、それなら週1回でいいだろ…じゃなくて!」
レイシア「あっ、今日はまだ殴ってなかったわねー。ちょうどいいわ」
セリス「人の話を聞けって言ってんだろー!」

…その後、バキッという音が部屋に響いたとか響かなかったとか…。
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