Chapter 13-3
アルムがエアスラッシュの練習を開始したちょうどその頃、部屋ではレイシアとセリスが話をしていた。

レイシア「前々から思ってたんだけど…セリス、あなた嫌いな食べ物とかないの?」
セリス「嫌いな食べ物か…今まで見たことあるもんなら、全部食えると思うぜ。でも、何で急にそんなこと聞くんだ?」
レイシア「いや、特に深い意味はないんだけど…セリスが「あれ嫌い」「これ嫌い」って言うところ見たことなかったから、好き嫌いが無いのかな、って思っただけよ」

確かにセリスは、今まで出された食事を残したことがない。少なくとも、レイシアが彼と知り合ってからは、その現場を一度も見たことがなかった。するとセリスが何やら意味深な表情をして、小さく呟いた。

セリス「好き嫌い…か。それが出来んのは、贅沢な暮らしをしてるヤツだけなんだろうな…」
レイシア「えっ?」
セリス「…教えてやろうか?俺に好き嫌いがない理由」

真面目な表情だから、真面目な話に違いない。普段のセリスには見られない、眼力とやらをレイシアはわずかでも感じたのだ。だから、こちらも真面目に「…うん」と返した。

セリス「…俺がザハンで育ったってことは、もう知ってるよな?」
レイシア「…うん」
セリス「あそこには、船は一切来ないんだ。つまり、世界に取り残された孤島ってわけだ。付け加えるなら、エドの育ったルザミもそうだけど」
レイシア「えっ…船が来ないの?」
セリス「そうだぜ。要するに、外から物資は入って来ない。自給自足の生活だよ。だから信じられないと思うけど、ザハンじゃ金っていうもんが一般的じゃないんだ。人口もそんなに多くないこともあるけど」
レイシア「…それじゃあ、ザハンでは物を売り買いすることも…」
セリス「無いな。少なくとも俺の知る限りじゃ、無かった」

そこでセリスは一呼吸置いて、また続きを話した。
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