Chapter 10-10
セレイス「大丈夫さ。セイファーが一緒なんだ。それにしっかり事の経緯も話せる。きっとレイズも、また迎えられるはずだよ」

確信を持って言い切るセレイスに、アルムは少し安心できた。

アルム「また…会いに来てくれるかなぁ…?」

ぽつりと呟く言葉にも、セレイスは優しく言った。

セレイス「それは、セイファーたちにしか分からない。だけど…僕がセイファーなら、絶対もう一度君に会いに行くよ」

◇◇◇

部屋に戻ったアルムは、窓の外をちらりと見た。あいにく、月や星は厚い雲に覆われて見ることが出来ない。それでも、雲を通して入ってくる月光は、その下で動き回る人影を映し出すのに十分な明るさを持っていた。

アルム「アンナ…?」

アンナは右手に扇を持ち、月夜の下で一心に踊っていた。その舞踊力に、アルムはしばし、まばたきをすることさえも忘れるほどに、彼女の踊りは華麗だった。あたかも彼女の周りの地面が動いているように、アンナは草の上を縦横無尽に動いていた。

そのままアルムが踊りに見入っていると、後ろからセリスがやってきた。

セリス「なーにを見とれてんだ?お前」

アルム「あれ…アンナが踊ってるんだ」
セリス「ほぉー、上手いもんだな」

セリスが窓を開けると、それに気付いたアンナはぴたりと踊りを止め、こちらに歩いてきた。

アルム「(あっ…バレちゃった…)」
アンナ「あんたたちねぇ…見せ物じゃないんだよ?」
セリス「わりぃ、つい見とれちまって。でも、なんで今踊ってたんだ?」
アンナ「…あたいは踊り子をやめたわけじゃないんだ。こうやってたまに踊らないと、体がなまっちゃうもんでね」
アルム「そっか…頑張ってるんだね」
アンナ「フフッ、アルム、お互い様じゃないのかい?」

そう言ってアンナは窓から離れ、再び華麗に舞い始めた。アルムはアンナに笑顔を返し、そしてそれを見て自分だけが頑張っているのではないと感じた。

アルム「よーし、僕も頑張らなきゃ!!」

もっともっと、誰よりも!

そう言って、アルムは裏庭に飛び出して行った。その横、窓の右側に、そのままセリスはぽつんと取り残された。

セリス「あいつ…何がどうなったんだ?」
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