Chapter 10-6
アルム「ギラッ!!…うーん、やっぱり難しいなぁ…」
メラを簡単に習得したアルムだったが、次のギラでつまずいてしまった。なかなか思うように炎が出ない。それを見ていたルーナが、変わったアドバイスをした。
ルーナ「どっかそのへんに、燃やしたいものがあるって思ってやってみたら?」
変わった助言だ。普通、的確な詠唱をしろだの、魔力をしっかり放てだの、そういう助言なのだが、ルーナのそれは別の視点から呪文を見ていた。大人にはまず無い感性である。
アルム「うん、やってみるよ」
そう言って、アルムが思い浮かべたのは、大量の干し草の束だった。別に理由は無く、これがただ燃えやすいと思っただけなのだが、人によってはこれが0点のテストだったりいじめっ子の顔だったりもする。
アルム「…ギラッ!!」
アルムは我が目を疑った。なんと、見事に小さな炎の海が飛び出し、しっかり仮想標的の場所に飛んでいった。ルーナは「すごい、出来たじゃない♪」と手をたたいて喜んでいる。当の本人は、もう一度同じ要領でギラを唱えてみた。間違いなく、再び手から炎が放たれた。
◇◇◇
その予習もあり、アルムはこの日の魔術学の時間を、ほぼヒャドの練習に充てることが出来た。これも標的を思い浮かべれば…と思ったのだが、さすがに上手くはいかなかった。ヒャドは氷の塊を対象にぶつける呪文であり、対象を凍らせる呪文ではないからだ。
ともかく、あの短時間でギラを習得できたので、アルムは嬉しかった。そして、訓練が終わったらセレイスにあのことを話そうと決めた。
が、他に1つだけ気がかりなことがあった。それは、3人組の様子だ。魔術学に限らず、いつもの訓練中は3人で騒いでいるのだが、今日は妙に静かだった。その理由はすぐに知れた。ルージャとノイルの会話が全くない。いつも何気ない話で盛り上がっていたし、幼なじみだということも聞いていたのでなおさら疑問だった。こっそりエドに聞いてみても「おれも分かんないんだよな…」と首を傾げるばかり。
仕方ない。今はその件はひとまず棚に上げておいて、後でセレイスと話をするために、アルムはセレイスに言った。
アルム「先生、訓練が終わった後…ちょっとだけいいですか?」