Chapter 10-3
ルプガナ、教習所に戻ってきた2人。辺りはまだまだ明るいが、陽は落ちようとしている。わずかにオレンジ色に染まった町の家々が、今の2人には妙に虚しく見えた。
アルム「…仕方ないよ。スラリンも見つかって、晩ご飯までに帰ってこれて良かったって思わなきゃ」
エド「うん…そうだよな…」
エドは明らかに落ち込んでいた。ひょっとしてこの一連の出来事はスラリンが原因で起こったのではないか、そう思うとエドはなんだかやり切れない気分になった。肩に乗ったスラリンも幾分しょげた様子で「ピキー…」と小さく鳴いた。
アルム「ほらさ、流れて来なかったってことは、川に落ちてないってことでしょ?だから大丈夫だよ、セイファーもレイズも」
エド「うん…でも、心配なものは心配だよ…」
アルムは懸命にエドを励ますが、エドは相変わらず引きずっている。レイズを憎む気持ちなど、とうに頭から消え去っている。ただ、彼の無事を願うばかりだった。ここは下手に励まし過ぎない方が良いと判断したのか、アルムはそれ以上何も言わなかった。
いつまでもここにいても埒があかないので、2人は屋敷に入り、別れた。ひとまずこれでスラリンは無事に戻ってきたから良しとしよう、アルムはそう考えた。2人はきっと生きているのだから、また会いに来てくれるだろう。それとも、こちらから会いに行こうか?…無理だ。
色々と考えを巡らせていたアルムだったが、ここで1つ疑問が浮かんだ。
アルム「なんで…スラリンが必要だったんだろ…?」
こればかりは、レイズの上にいる「敵」と相対してみないと分からない。すっぱりと考えを断ち切り、アルムは部屋に戻りかけて、止まった。服に己の血や返り血がついている。これではレイシアに何を言われるか分からない。
しばし自室の前で凍りついたように止まったアルム。そこに、偶然セレイスが通りかかった。
セレイス「アルム…?」
アルム「あっ…」
部屋の前で留まっていて、自分を見ると一転慌てふためくアルムに、セレイスは思わず吹き出した。そして、小さく一言。
セレイス「僕の服でよかったら、貸してあげようか?」