Chapter 10-1
深い深い森の中―――位置的には、ドラゴンの角北塔から北東に広がっている森だ。ここに、座っている人影と、倒れている人影がある。言うまでもなく、セイファーとレイズである。

セイファー「レイズ…」

レイズは意識を手放し、死んだように眠っている。その横でセイファーは、心配そうにレイズを見ているのだった。

◇◇◇

レイズ『…お前に連れて行かれるのだけは…ごめんだ!』
セイファー『なっ…レイズ!レイズーーー!』

レイズが飛び降りた直後、自らも彼を追って飛び降りた。そして全速力で急降下するセイファー。何とか、下に流れる川の水面ギリギリでレイズをつかむことに成功した。そのまま川沿いに少し上り、川のほとりのこの場所に降り立った。

レイズは、落下している時に既に意識を失っていた。それから数時間が経過したが、レイズが目を覚ます気配はない。それでも、セイファーはずっとその場を離れることなく、レイズの様子を見続けていた。そこで、セイファーはふと気付いた。

セイファー「(翼の色が…薄くなってる…)」

レイズの背にある翼は、最初は真っ黒だった。それが今は、ほとんど灰色に近い色にまで変化していた。これは別の言い方に言い換えられる。レイズの翼の色は、セイファーのそれに近づきつつある、と。

セイファー「(もしかして…元に戻りかけてるんじゃ…?)」

そんなセイファーの予感は的中した。数分後、ついにレイズの翼に大きな変化が起こった。

セイファー「(あっ…ああっ…うそ…元に…戻った…!)」

なんと、目視確認できる速さでレイズの翼の色が変化したのだ。そして、数秒と経たないうちに、ついに翼は汚れのない、真っ白なものになった。

さらに、もう1つの変化が起こる。

レイズ「…っ…ん…」
セイファー「…!?…レイズ!!」
レイズ「…セ…イファー…」

レイズが、意識を取り戻した。しかし、まだ彼の声は弱々しい。セイファーがじっとレイズを見ていると、レイズは一筋の涙を流していた。

セイファー「レイズ…?なんで泣いて…」
レイズ「なんで…なんで僕を…助けたんだよ…」
セイファー「なんで…って、親友だからに決まってるじゃないか!ボクは…あんなレイズをずっと見ていたくなかった…!」

そう話すセイファーに、レイズは少ししっかりしてきた声で返した。
bookmarkprev 156/646 next
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -