Chapter 4-4
「……なんだ? すまんが、君も帰ってくれないか」
苛立ち混じりの男に、キースは臆することなく切り出した。
「……あなたは、クラリスの父親ですよね。あいつとの間で何があったか、話してくれませんか?」


アレクが追いついた時、クラリスは町外れの大木に背中を預けて、さめざめと泣いていた。
「……クラリス」
追いつきはしたものの、心中察するに余りあるアレクは何と声をかけたらいいか分からない。
「ア、アレクっ……私っ……!」
クラリスは何とか言葉を絞り出す。
「クラリス……無理しなくていいよ。今はひたすら泣いて、その後ゆっくり話そう……それまで僕も付き合うから、さ」
アレクは優しくクラリスの肩を叩いた。
「……っ……ううっ……!!」
クラリスはその場にうずくまり、声を押し殺して、ただただ泣き続けた。

一時間ほど経っただろうか、アレクと落ち着きを取り戻したクラリスのもとに、キースが合流した。
「おーい、アレク、クラリス!」
街から走ってきたキースを、二人は笑顔で迎えた。
「ああ、キース! どこに行ってたのさ」
「どっかに行ったのはそっちだと思うんだけどな……まあいいや。遅くなって悪かったな、ちょっとクラリスの親父さんと話してきたんだ」
「えっ……?」
クラリスが驚く。キースは後を続けた。
「全く、お前の親父さんも素直じゃねーよな。しばらく話したら、クラリスをよろしく頼む、って言われちまったよ」
「うそっ…!!」
「……やっぱり親はどうあっても子を嫌いにはなれないんだよ。お前の家出の理由だって十分に分かってるって言ってたよ。それなのに久しぶりに会ったクラリスに対してあんな態度をとってしまったことを反省してたな」
「………」
「クラリスには酷い事をしてしまった。もう帰ってこないかもしれないが、これだけはクラリスに伝えてほしいって」
一呼吸置いて、キースは言った。
「これからはいつでも帰ってこい。私はいつまでも待っている。ただし、家に留まるのは旅の目的を成し遂げてから! ……だとさ」

クラリスの目に再び涙が浮かぶ。

「お父さん……っ」
「クラリ……」
アレクの言葉をキースが遮った。
「今はそっとしといてやれ」
「……うん、そうだね」

ニ人はその場から静かに離れた。


ニ日ほど滞在した後、三人はムーンブルクを後にし、船に戻った。
ムーンブルクでは、図書館を訪れたりして、調べてみた。しかし、ロトの印や子孫について、旅人が閲覧できる書庫から得られた情報は、三人も聞いたことのある言い伝え程度のものだった。
新たな手掛かりを得ることはできなかったが、魔法書を読んだアレクとクラリスは、呪文について何かをつかんだような気がした。その部分については、多かれ少なかれ収穫があったと言えるかもしれなかった。

船は北に向かった。ここから大陸沿いに北上し、ローラの門と呼ばれる関所のある海峡をくぐれば、内陸の古国、サマルトリアが近づいてくる。
ムーンブルクで得られたものは、きっと小さいものではなかったはずだ。その思いを背に、三人は旅を続ける。
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