Chapter 3-9
キースは屋敷に入った。屋敷の門に立っていた番は、キースの顔を認め、そのまま招き入れた。一応自分の家なのだから、普通に入れるというわけだ。

「あっ、キース様! お帰りなさいませ」
お手伝いらしき人がキースに一礼する。
「堅苦しいからキースでいいって。出発のとき、帰ってきたら友達感覚で話そう、って言っただろ」
キースは苦笑いを浮かべた。もとより敬語で話すのも話されるのも合わないのだ。
「わかったわ。キース、今日はどんな用件で?」
「(相変わらず切り替え早いな……) ああ、おじさんと話がしたいんだよ」
「レグルス様なら、自室で休まれてるわ」
「そうか、ありがとう」
「ええ」
お手伝いから得た情報をもとに、キースはレグルスおじさんの部屋に向かった。


「おおキース、久しぶりだな」
この家の主、レグルスが笑顔でキースを迎えた。
「ああ、久しぶりに帰ったよ。ちょっと聞きたい事があるんだけどさ」
「???」
不思議がるレグルスに、キースは懐からロトの印を取り出し、見せた。
「……これは?」
「ロトの印、って言えば、おじさんなら分かるよな?」
「…………!!」
その瞬間、レグルスが驚きの中に曇りを見せたのを、キースは見逃さなかった。
「これは勇者、ロトの子孫しか持てないと言われてる。このロトの印を俺が持てる理由を教えてほしいんだ」
しばらく沈黙が流れる。そして、逡巡を押し殺すように、レグルスが口を開いた。

「……そうだな……お前は……ハーゴンを倒し世界に平和をもたらしたローレシア王子の、義理の母の曾孫なのだ」
「……は??」
キースは間抜けた声がでた。
「ローレシア王子の母君は早くに亡くなられた。だからローレ国王は新たに妃を迎えられたのだ。その王妃の曾孫がキース、お前だ」
「……じ、じゃあ」
「そうだ。お前の体には少ないが、確かにロトの血が流れておるのだ」
「…………」
「私はお前の両親からこの事実を隠すように言われた。そして、キースが自立したその時、全てを話すことを許されたのだ。私の今の地位はキースの両親によって創られたようなものだから、私はその頼みを忠実に守った……だが、旅立ちも出来るようになったお前は、自立できたと取っても良いだろう」
「俺は……ロトの子孫だったのか……」
「そうだ。キース、その印を手にしたことが証拠だ。誇りにするがよい。そして、旅の目的を遂げるのだ。私はそのためなら、いかなる努力も惜しまんよ」
「さあ行け。お前には心強い仲間もいるのだからな……」
「……ああ、ありがとう。必ずバスラを倒して帰ってくるよ!」
「うむ、楽しみにしているよ」

「……ロトの子孫、か……!」
キースはロトの印を握りしめ、そうつぶやいた。
レグルスの表情に、何かぼんやりした色が漂っていることにも気づかずに。


〜続く〜
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