Chapter 3-7
戻ってきたことを確かめて、キースは握ったままの手を開く、そこには、朝陽の光を受けて煌めく紋章のような何かがあった。

「これは……!」
キースは驚いた表情で、紋章を見つめた。それが一体何なのか、彼には分からなかった。

宿に戻り、未だ目を覚まさずにいた二人を起こす。寝ぼけ眼を擦る二人に、キースは事の顛末を説明しながら、与えられた紋章を見せた。すると、アレクの表情がみるみるうちに変化した。
「ちょっと待って! これ……多分、いや絶対ロトの印だよ! 勇者にのみ与えられるって言われてる紋章!」
アレクは興奮気味だった。
「なんだって?」
「なんだって? じゃないよ! キース、これをどうやって手に入れたのさ?」
「だから言ったじゃねーか、朝メルキドの入口に言ったら、祠みたいなところに飛ばされて、そこにいた精霊みたいなのからもらったんだって。これ以上説明できることはねーぞ」
キースは繰り返した。
「ロトの印……本で読んだ事があるわ。キース、あなた、勇者ロトの子孫だったの……?」
クラリスはいまだに信じられないという表情をしている。
「まさか、そんな話は誰からも聞いたことねーよ。俺だって、なんでこれをもらったかわかんねーんだ」
まだ事態が飲み込めていない、といったふうにキースは言った。

「と、とにかくリムルダールに戻ろうよ。ゴーレムは倒したんだし、先に船を借りに行こう」
アレクがそう言うと、キースもクラリスもそれに賛成した。
「クラリス、ルーラでリムルダールまでお願いできる?」
アレクがクラリスにたずねる。
「ええ、わかったわ。とりあえず出発の準備をしましょう」


リムルダール。主に言い渡された条件をクリアしたキースたちを、主は温かく迎えた。
「よく戻ってきた。話は聞いているよ、見事ゴーレムを打ち倒してくれたようだね」
「はい」
「確か船を貸す、という約束だったかな」
「は、はい」
アレクがそう答える。
「……やはり気が変わった。貸すのは止めにする」

「「「!!!」」」
三人は言葉を失った。
「ちょっと待って下さい! そんな……せっかく頑張ったのに……」
クラリスが落胆の面持ちでそう言った。主は、それを聞いてなお笑顔で話しかける。
「君たちが頑張ったのは十分に分かっておる。だから、貸すのはやめたんだ」
「え? ……それは、どういう意味ですか?」
アレクが聞く。
「船は持って行きなさい。返す必要はない、君たちの自由に使いなさい」
「えっ!? 本当にいいんですか……!?」
アレクは飛び上がった。
「ああ、君たちの実力はよくわかった。悪者退治は君たちに任せることにしたよ。どうかこれから頑張ってくれたまえ」
「はい、ありがとうございます!」
クラリスはとても明るい声で、返事をした。二人も笑顔で、主に船を譲り受けるお礼を述べた。


「キース、さっきから口数少ないけど、どうかした?」
主から譲られた船の上で、アレクがそう指摘すると、キースはぎくりとしたように肩を強張らせた。キースはしばし考えこんでいたが、二人に向き直るとこう言った。
「なあ、悪いけど次ルプガナに行かせてくれないか……? ちょっとやりたい事があるんだ」
意味深なキースの言葉といつも以上に真面目な表情に、二人はルプガナに行くことに同意した。
そして船は、リムルダールからアレフガルドに沿って進み、港町ルプガナを目指した。
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