Chapter 3-4
「……あっ!」
キースがふと立ち止まる。視界に映った巨大な物体――十中八九ゴーレムだが――を前に、何かを思い出したように足を止め、ちょっとこっちに来いと二人を手招きし、そのまま向こうから死角になる場所に身を隠した。
「キース、どうしたの?」
「何かあったのかい?」
まさか怖気づいたなんてことはないだろうと、クラリスとアレクがキースを追って問う。見ると、特にキースは怯えを見せた様子はないのだが、なにやら彼には似合わない小難しい表情をしていた。
そして、キースはおもむろに口を開く。
「いや、ゴーレムのことなんだけどな」
「うん、倒さなきゃいけないんだよね。僕なら大丈夫、なんとかして頑張るつもりだけど……」
アレクはぐっと拳を握って意思を伝える。が、キースはそうじゃなくてと首を振る。

「……アレク、お前がいたらゴーレムと戦えないんじゃねーのか?」
「……あっ」

完全に拍子の抜けた声が、アレクの喉から漏れ出した。
「しまった……完全に忘れてたよ……」
戦う気を見せていたアレクは、その顔から落胆の色を隠せなかった。そう、アレクがいては、ゴーレムが彼を街に通してしまう。それは、一度街を訪れたキースにはよくわかっていた。そのため、アレクを伴っていてはゴーレムと戦いようがないのだ。つまり、キースとクラリスの2人でゴーレムを倒さなければならない、ということになる。「厳しいわね…」と、クラリスが事情を踏まえて呟いた。
唯一の回復役であるアレクを欠けば、ゴーレムとの戦い、キースとクラリスが無事にいられることは難しいだろう。苦戦を強いられるであろうことは言うまでもない……かに思われたのだが、アレクがここで単純明快なことに気付く。
「ちょっと待って、これって単に僕が見つからなきゃいいだけの話じゃないのかな?」
「「…………」」

思わずキースとクラリスが顔を見合わせる。言われてみれば、と小さく吹き出す。回復役がいなくなる心配は、どうやらなさそうだ。

さて、となれば、話はどのようにして戦うかということになる。油断ならない戦いとは言え、あまりに深い手傷を負いたくはない。
「……飛び道具で距離を取って攻めてみるか?」
「それもいいけど……あれだけ大きいと、足元を見るのは難しいんじゃないかな。ゴーレムの真下は穴だと思う。動きも鈍いし」
「なるほど……確かにそうね」
「よし、じゃあ俺が真下に潜り込んで剣で攻める。クラリスは少し離れた所から呪文で攻撃してくれ」
「ええ、分かったわ」
「それじゃ、僕はこの近くに隠れながら援護するよ。二人とも、気をつけて」
「了解。じゃあ、行きましょう!」

クラリスの声で、二人はゴーレムの視界に入る場所に躍り出た。そして、キースは素早く巨体の足元に潜り込むと、隼のごとく高速の剣をゴーレムに当てた。
瞬間、咆哮に近い声でゴーレムが呻き、両腕を振り回す。キースは思わず耳を押さえた。地面を微かに揺らすほどの音量である。
腕が当たらない位置まで離れていたクラリスも、これには耳を塞ぐ。
振り回した腕が地面を叩きつける。抉れた地面が、石の雨となってクラリスに襲いかかった。両手で耳を塞いでいた彼女は、防御が間に合わない。
「……きゃあっ!!」
「クラリス! ……くっ……!」
悲鳴を聞くや否や、キースが叫ぶ。そしてすぐにクラリスの元に向かおうとするも、ゴーレムの動きと石つぶてがそれを邪魔し、動けない。
「僕が行く!」
アレクは飛び出し、石の降り積もったところからクラリスを引きずり出す。
「……ベホイミ!」
傷だらけのクラリスの体が、癒されていく。さほど経たないうちに彼女の傷は見えなくなった。
「ありがとう、アレク。助かったわ」
「動ける? 大丈夫ならキースに加勢してあげて。さっきより離れた距離でね」
「ええ」

クラリスは頷き、周りに注意を払いながら、ゴーレムに向かって両の手をかざした。
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