Chapter 1-3
しかし――。


パキィン……!!


「なっ……!!」
キースは目を見開いた。今し方斬りかかったはずの剣は柄を残し、軽い音を立てて折れた刀身が床に散らばった。
(どうなってんだ……!? 剣が奴に当たる前に折れた……?)
いまだ状況が飲み込めないキース。その隙をバスラが見逃すはずはない。好機と見るや両の手をキースに向け、何やら念のようなものをその手に込め始めた。

(なんだ……魔力か……!?)

「むんっ!!」
「おわっ!」

魔力の凝縮された高速の飛球を間一髪で避けたキース。体勢を立て直し、身構える。しかし、反撃に転じようとも、剣が折れているのでは何も出来ない。
「くっ……!」
キースは握っていた柄だけの剣を投げ捨て、素手でバスラに飛びかかった。

「くそっ……うらぁっ!!」
「なんだそれは……?」

キースの拳はいくらか当たりはするものの、バスラはびくともしない。そうして距離が空いた瞬間、バスラは再び光る球を作り出し、キースに向けて飛ばしてきた。

「くっ! このやろ……!」

キースはこれもスレスレのところでかわす。しかし、バスラは既に手を打っていた。体勢の崩れた所には、もう光球が飛んできていたのだ。

「……甘いな」
(ダメだ、避け切れねー……!!)

その球は、狙い違わずキースに直撃した。その衝撃でキースは後ろに吹っ飛び、壁に激しく叩きつけられ、崩れ落ちた。

「ぐああああっ!! がはっ……!!」

口内に広がる血の味、背中に走る激痛。そんなことは露知らず、バスラは倒れたキースに向かって吐き捨てた。

「身の程を知ることだな」
「くっ……そ……」
「貴様のような雑魚は殺すだけ無駄だ。オレはやらねばならない事がある、じゃあな」
「くっ…………待……て……!」

立ち去ろうとするバスラを呼び止めるも、体が言うことを聞かない。バスラはふん、とキースを一瞥し、嘲笑とともに通路へ消えていった。その後ろ姿を朧気に見たのを最後に、キースは意識を闇に落とした。
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