Chapter 1-1
ゆっくりと舟を漕ぎ出し、だんだんと離れていくラダトームを見送るキース。竜王の城で一体何が起こったのか、この目でしかと確かめる必要があった。ラダトーム王の助言で舟も手配できた。これで、わざわざ東のリムルダールを経由する陸路を採る必要も無くなったのだ。

(あそこだな……!)

キースは前方にそびえる城を睨み、心中でそう呟く。断崖に位置し、舟が着けそうな場所はないかに思われたが、湾になって潮流が緩い場所を見つけ、そこに舟を着けた。不安定な岩場を駆け上ると、いよいよ眼前にはラダトームとはまた違った、荘厳な雰囲気を醸し出す城がその全景を現した。

(竜王……か)
キースは図書館や王の間で聞いた話から、竜王というものについて多少の知識を得ていた。
竜王一族は初代から数えて4代目の時に、勇者一行に協力した過去があること。そのため、今の竜王も人間に対して非常に友好的で、旅人もたまに訪れること。今の竜王はもはや悪の存在ではないということ。

しかし、今回このような事が起こった。一体これはどういうことかと自身に問う。この辺りまで王に話を聞いておけば良かったかと考えたが、目的地を前に引き返す選択肢はない。キースは二通りの可能性を考えた。

一つ、竜王が代替わりし、次の竜王が悪の存在になった。
(いや……確か今の竜王は八代目で、ついこの間代替わりしたって話だったな)

記憶を手繰り寄せ、もう一つの可能性を考える。

二つ、全く新たな悪の存在と呼べる何者かが竜王の城に侵入し、好き勝手やっている。
(曖昧な気もするけど、竜王の世代交代よりはこっちのが可能性高いか……?)

しばらく思案を重ねていたキースだが、そもそも中に入らなければ何も始まらない。そう思い、一度考えることをやめて、キースは竜王の城の内部へとその足を踏み入れた。
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