Chapter 37-16
目を閉じると、キースの脳裏に、今までの旅の記憶が鮮明に蘇ってきた。
あの日、観光気分で訪れたこのアレフガルドの地。今、ここで世界の命運を左右する大決戦が行われていようとは、当時の自分は知るはずもなかった。
旅の中での、数々の強敵との戦い。バルシドー、バスラ、ザルグ、ローム……挙げていけばきりがない。そんな強敵たちに打ち勝ち、キースは強くなっていった。
一年前の自分が今の自分を見たら、どう言うだろうか――ふと、そんなことがキースの頭をよぎった。
また、キースは旅の中で心強い仲間たちと出会った。アレク、クラリス、ラルド、ディル、セル、ルイ、そして……キット。
そのうちの一人でもいなければ、自分はここには立っていない。そう、奇跡は初めから起こっていたのだ。その奇跡の集まりが、キースの両手に握られている。
――今は、思い出に浸るときではない。今こそ、世界を救うときだ!
キースの頭に響く声。誰のものか、キースには分かっていた。
「お前が負ける理由はただ一つ。人間の力を、甘く見たことだ!」
「ふざけるな! 余は決して人間などには負けぬ! 余は新たな世界の神となるのだ!」
「……お前みたいな神なんざいらねーよ。行くぜ!!!」
キースは声を上げながら、ゼノムに突っ込んでいく。気づけば、仲間たちも同じように叫んでいた。
「うおお……この余が……人間などに……人間などに……!!!」
七人の声が、重なる。
「「「「「「「エターナルソーーーード!!!!!」」」」」
「ぐっ……ぐわああああーーーーっ!!!」
ゼノムが叫び声を上げながら、眩い光に包まれてゆく。溢れんばかりの光は、ゼノムの叫びをかき消した。
光が止み、目を開けたキースの目の前には、ゼノムの姿はなかった。
「勝っ……た?」
信じられない、というような声で呟き、それから後ろを振り返る。そこには、仲間たちの姿があった。
今、長い長いキースの旅が、終わりを告げた。沈みゆく太陽が、長い長い影をつくる。オレンジ色に染まった荒野の真ん中で、キースは剣を離すことなく、ただ握り締めるばかりだった。
〜続く〜