Chapter 37-13
「……!!!」
キースが何かを叫ぶ。しかし、声にならなかった。

一面に光が溢れ、キースははっとして自分の体を見た。みるみるうちに傷が塞がっていき、やがて完全に体力が回復した。立ち眩みもない。血液までもが元に戻ったようだった。

さらに、倒れていた仲間たちが次々と起き上がる。殺された仲間全員が、息を吹き返したのだ。

――しかし、キースが見ていたのは起き上がった仲間たちではなく、その先に倒れているキットだった。クラリスも同じように、キットに目を向け、溢れる涙を必死にこらえている。
「キット」
キースが下に視線を落として一言呟いた。しっかりと目を閉じ、横たわっている彼に、キースは何を言えばいいのか分からなかった。
「キット……あんたは……!」
そしてもう一人、キットに目を向けていた者がいた。

(俺が……あそこで財布をすられておけば良かったのか? それとも…こうなることが必然だったのか……!?)

ラルドは拳を握り締めた。しかし今は、嘆き悲しむ暇はない。

「……何故そこまでする。何故他人のために、自らの命を捨ててまで……」

ゼノムの声で、皆は一気に現実に引き戻される。

「俺たち人間は、一人じゃ生きていけない」
キースが呟くように口を開いた。
「生まれてから、死ぬまで、ずっと誰かに支えられて生きていくんだ。その誰かを支えることが……人間の強さなんだよ。この強さはたとえ一人のものでも……お前なんかより十倍も百倍もつえーんだよ……人間の強さ、俺がてめーに見せてやる……!」

キースの体が強く光る。上空には分厚い雷雲が立ち込める。
「……何が始まると言うのだ……!」
ゼノムは空を見上げ、呟く。

「……みんな、俺と一緒に叫んでくれ!」
キースが叫んだ。六人全員、揃ってコクリと頷く。その表情は真剣そのものだった。ロトの子孫――精霊ルビスに選ばれし勇者が、皆と力を合わせて唱える呪文はたった一つだ。

「行くぜ……せーのっ!」
「「「「「「「ミナデイン!!!」」」」」」」
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