Chapter 37-11
「キース……?」
クラリスが心配そうに呼びかけるが、キースの耳には届いていないようだ。
「たった今、みんな必死だと言ったな?」
「だったら何だよ……!」
「余がここにいるからには、それなりの強者たちが命を捧げたと見えるが?」
その通りだった。六隊長がそれぞれ命を投げ打って、ゼノムをこの地に召喚したのだ。
「けど、奴らは一回俺たちに倒されてんだ! それに、あいつらはむちゃくちゃ長生きしたはずだ。エストなんか絶対そうだ。でも俺たちの命はあと百年足らずなんだ。だから、てめーら魔族以上に必死なんだよ、人間はな!」
この言い争いの間に、苦渋の選択を迫られている者が一人いた。そんなことを知ってか知らずか、言い争いは終わりを告げようとしていた。
「俺はこんなとこで死んだりしねぇ。ここにいる八人全員で、また楽しく騒ぎたいんだよ!」
「ならば、余を倒すことだな。それができれば、の話だが」
「やってやるさ! そのために、俺はここにいるんだからな!」
キラリと光るロトの剣を手に、キースは高速でゼノムに斬りかかった。
(……速い!)
必死にキースの剣撃を食い止めるゼノム。その凄まじい速さと、一撃一撃の攻撃の重さに、ゼノムは防ぐことしか出来ない。
つい先ほどまでキースたちを圧倒していたゼノムは、目を見開いた。キースの強さが、桁違いに増してきている。
(こやつ……この期に及んでさらに強く……!?)
「でやああああぁ!!」
「ぐおおっ……!」
確実な一撃が決まった。ゼノムは衝撃で少し後ろに吹っ飛んだ。
「よっしゃ!」
キースが左手で、小さくガッツポーズをする。それは攻撃を緩めた何よりの証。倒れたゼノムは、低い笑い声をあげた。
「ふっ……ふははは……この戦いの初めにお前が言ったこと、そのまま返してやろう! その甘さが、命取りになるのだ!!」
ズドッ!
突如ゼノムが起き上がり、目にも止まらぬ速さでキースの体を貫いた。
「がっ……!!」
「「キース!!」」
鮮血を吐き出し、その場に倒れ込むキース。ゼノムはゆっくりと指を折る。
「……ははは、あと二人だ……なっ、何っ……!?」
ゼノムが驚愕する。倒したはずのキースが、なんと再び立ち上がったのだ。
「俺は……負けねーぞ……!」