Chapter 37-10
煙が巻き上がり、ゼノムの姿が見えなくなる。肩で息をするクラリスの表情は、今までになく鋭かった。

「私は……絶対に許さないわ!!」
「ならば、消えてもらうか」
「!!!」

クラリスはばっと後ろを振り返った。セルを、そしてディルを倒したゼノムの腕が伸びてくる。間一髪で上体をのけぞらせ、クラリスは死の攻撃を回避した。

「何故だ! マダンテは直撃したはずだ……それなのに……っ!!!」
それなのに何なのか、ラルドは口にしなかった。いや、口にできなかった。キースが中途半端に言葉を切ったラルドを振り向くと、彼の背後には黒い影が立っていた。そして、その影から伸びる右腕がラルドの胸をずぶりと貫いていた。

「あと四人」
「ラルドっ……!!」
「そ、そんなっ……あのラルドまで……!」

ゼノムは一人、ぼうっと涙を流しているルイに目を向けた。そこには、気丈な10歳の少女の姿はなく、目の前で起こった残酷な現実を受け止め切れない、か弱い10歳の少女の姿があった。

「……哀れなものよ」
ゼノムは短くつぶやくと、さっと姿を消した。次の瞬間、ルイの体が吹き飛んだ。
残っ三人は、もう何も口にすることができなかった。

「……歴戦の強者ともあろうお前たちが、ただ一人殺されただけでこれほどまでに大きな隙を作るものなのか。余には分からぬ」

倒れた者たちを順に見て、ゼノムは嘲笑う。その瞬間、キースの中で何かがぷつんと切れた。

「ああ……てめーには分かんねーよ……」
「……?」
「それがなんでか……てめーなんかには……一生かかっても分かんねー!!」
「ほう……」
「どうせてめーは死にゃしないんだろ? いつまでも生きてんだろうよ……てめーを倒せる奴だっていないんだ。けどな、俺たちは放っといたらいずれ死ぬ時がやって来るんだ! だからみんな必死なんだよ! それを……てめーなんかに分かられてたまるか!!!」

そうゼノムに言い放ったキースの目は、怒りに震えていた。
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