Chapter 30-8
バリーはゆっくりと、ラルドに近づいてくる。しかし、無防備にもほどがある、といった様子だ。どこから斬りつけても当てられそうなほどの隙が、バリーにあった。
ラルドは剣の柄を握りながらも、攻撃をすることはなかった。そればかりか、じりじりと後退りしてバリーとの距離を保っていた。

「……なるほど、貴様はどうやら名を明かして正解の相手だったようだな」

ラルドは黙したまま、様子を窺っていた。バリーは諦めたように足を止めた。隠してあった右手には炎が浮かんでいたが、ラルドが攻撃してこないと見ると、瞬時にそれを消し去った。

一つ一つの攻防が終わる度に間をとる二人。どちらも、息つく暇のない肉弾戦を臨みたいところではあるのだが、お互いに隙を作る可能性が高く、なかなか出来なかった。まっすぐ向き合う二人から静かに、かつ激しく吹き出す青い気と黒い気がぶつかり合っている。
「さて、では決着をつけるとするか……」
「…………」
一息の後、バリーは自らの両腕に全身の闘気を集め始めた。そして、両腕に闘気が凝縮されるのにそう時間はかからなかった。

「砕けるがいい! カオスウォール!」

それをバリアのように前方に掲げながら、ラルドに迫ってくるバリー。
しかし、やはりラルドも準備は出来ていた。鞘の中の剣から、完全に手を離す。そして、拳をぐっと握り締めた。自らの右腕に、全ての力を込める一撃で応戦する。

「ギガ・インパクト!!」

ドゴォォォォォォォォン!!!

ラルドの拳と闇の壁が激突した。両者一歩も退かない壮絶な力比べだ。
「ぐぬぬ……!」
「うおおっ……!」
ラルドの右腕は、闇の壁を押し返し、突き破った。しかし、バリー自体にダメージを与える余力は、既に残っていなかった。
(やっぱり……奴は強い! レガートやガルドスを貫いた俺の右腕があんな薄い壁と互角だった……!)
ラルドは息を整えながら、冷静に戦況を分析する。
長引けば不利だと、ラルドの直感が告げる。体力、魔力の差が出ては勝ち目は薄い。

まだ息は整い切っていないが、ラルドは剣を抜いた。ついにここで、生まれるかも知れない隙を覚悟で、本格的な戦いに持ち込もうという大きな賭けに出た。
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