Chapter 30-2
「……っ」

じめじめした嫌な空気に耐えかねて、ラルドは目を開けた。まだ朝と呼ぶには早い時間だが、一度起きると眠れない彼は、外が明るくなるまでしばらくの間、家から持って来ていた分厚い本を取り出した。
初めは退屈しのぎにと持って来た物なのだが、読んでみるとみるみる引き込まれていった。
本には、剣に頼らない特技の数々の説明などが載っていた。剣を使うのは、最後の方に記された技だけだ。

「なるほど、これはかなりきつそうだな……」
「……この技は、これが……こうか……」

彼にしては珍しく、朝の訓練も忘れるほどに読みふけった。そして――。
「……そろそろ目が痛くなってきたな……って、もう夕方か……!?」
気づいた時には、外が薄闇から夕闇に変わっていた。何度か目をこすってみたものの、時計の針が動かぬ証拠だった。
「……宿代が倍になってしまった」
ため息をついて本を閉じる。そして夕食を食べた後、宿代を支払って夜の城下町に出た。

朝から降っていた雨は止んだ。しかし、空は曇っており、星は見えない。先が見えないラルドの旅路を、そのまま暗示しているような気がしてならなかった。
(……二年もの間、俺は独りだった。なのに、あの時と今では何かが違う)
その違和感の正体を、ラルドはつかめなかった。そして、それは戦いで忘れようとした。ただひたすらに敵を倒し続ける日々が、それからしばらく続いた。

「……何だと!? それは本当か!?」
「は、はい。確かな情報です」
「そうか、すまなかった。ありがとう」

ある日、ラルドは旅の商人を捕まえていた。そして、その商人から驚きの情報を得て、数日過ごしたアリアハンの城下町に別れを告げるのだった。
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