Chapter 30-1
「…………」

何も言わずに目を伏せているラルド。どうにかここまでたどり着いたが、非常に苦しい道のりだった。

――あの日。
レーベの村を飛び出すように走り去ったラルド。ひたすら遠くへ遠くへ行きたかった。敵が追いつけないほど、速く速く走った。

(俺は……一体何がしたいんだ、何をするべきなんだ!)

キットと力を合わせて、ガルドスを倒したのは事実だ。しかし、彼はガルドスの正体が闇を統べる魔王であり、その力をほとんど出していなかったことをまだ知らなかった。
「…………」
やがて足を止め、息を整えるラルド。今の自分には、やるべき事が見つからない。自分探しの旅とは、つまり目的を探すところから始めなければならないのだ。しかも、キットに持っていた全財産を渡してしまったので、全くの無一文だった。
「ここは……」
気がつけば、アリアハンの城下町が左の方に見えていた。とりあえずは行ってみようと、ラルドは現れる敵をなぎ払いながら再び走っていった。


今日も人が溢れんばかりの城下町。行き交う人々の笑顔を見ると、世界に何が起こっているか全く知らないようで。

「はぁ……」
ため息をつきながらも、内心何も知らないままでいてくれと願うラルドだった。

このままここにいても時が過ぎていくばかりなので、ラルドは外に出て敵を倒すことにした。今夜の宿代ぐらいは稼がないと風呂に入れない。育ちのせいもあるのか、彼は極力、毎日風呂に入るようにしていた。
「出たかっ!」
早速現れた敵を秒殺し、落としたお金を手に入れるラルド。宿代を稼ぐという第一の課題はクリアした。


「ふぅ……」
風呂上がり。体から湯気が上った状態で、ベッドにドサッと倒れ込む。ラルドはこの瞬間が好きだった。
何より、彼は一人に慣れていた。かつては気ままに二年も旅をしていたのだから、料理や掃除もお手の物である。
そのまま何も考えず、眠りに落ちる。目的は明日考えよう――そんな結論を出すだけで終えた一日だった。
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