Chapter 27-6
だが――。

「さよなら、キース、ディル……」
ドスッ、という鈍い音が聞こえた。途端に、二人の腹部に激痛が走る。見ると短刀が深々と刺さっていた。思わずうずくまる二人。
「がはっ……アレク、一体何を……!」
「……残念だけど、ここにはアレクもクラリスも……『いないのさ』」
言葉の最後が、アレクの声ではなかった。はっとしてキースが見上げると、そこにアレクの姿はなく、クラリスもやはりどこにもいない。
「くそ……嵌められた……!」
「その通り。キミたち三人はここで死ぬんだよ」

どこからか声が聞こえる。部屋の奥に、一人の男がいた。
「もう名乗るまでもないかな? ボクは魔王軍魔術部隊隊長、シャンク。キミたちが覚える最後の名前だね」
「私たちはあなたなどに負けるつもりはありませんが?」
キットがシャンクを睨みつける。だが、シャンクは小馬鹿にしたようにケラケラ笑った。
「なーに言ってんの? キミたちが勝つつもりでも、ボクには勝てないって言ってんの!」
「……速攻で決めます! はああっ!」
キットは全身に力を込めた。黄色いオーラが、キースにもディルにも見えた。
キットは素早くベホマラーを唱えると、シャンクめがけて突っ込んだ。
「速い……!」
キースは驚いた。キットの動きが分からないのだ。キット自身、シャンクを捉えたと確信した。

だが、捉えたと思った瞬間、シャンクの姿は煙のように消え、彼はいつの間にかキースたちの背後に立っていた。
「どこ狙ってんの? ボクは一歩も動いちゃいないよ?」
「嘘言うな! さっきまで向こうにいたじゃねえか!」
キースが剣を振る。しかし、またしてもシャンクを捉えることなく、剣は空を切った。シャンクがまたケラケラ笑う。
「キミたちは幻のボクを見てるのさ。キミたちはこの部屋に入った時から、ボクのマヌーサに引っかかってたのさ!」

シャンクの高い声が響く。三人はその場で、歯を食いしばった。
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