Chapter 27-4
小一時間して、ようやく一通り片付いた後、キースが二人に話しかけた。
「一旦退くしかねえ。今のまま行っても、キットの回復呪文が使えないんじゃ負けちまう」
苦渋の選択だった。出来ることならこのまま親玉に殴り込みといきたい。だが、回復はおろかほとんどの特技を封じられた今、敵に勝てるほど甘くはない。いや、全力で挑んでも、必ず勝てる保証などどこにもないのだ。
敵がここに居続けてくれる保証はない。だがみすみす命を捨てるような真似も出来ない――そう考えて出した結論だった。
ディルも異存はないようだった。だが、キットは壁に寄りかかって微かに笑っていた。
「……何だ? どうした、キット」
「……キース、こんな時になんですが」
「?」

バシャッ!

突然、キースの顔面に謎の液体が降りかかった。それをかけた犯人は、もちろんキットである。
「ぶわっ、いきなり何すんだよ!」
キースは怒鳴った。ところが、キットは依然として微笑を続けている。
「何か、気付きませんか?」
「……そう言われれば、何か力が戻ったような……!」
キースの表情は怒りから驚きに変わっていった。さっき吸い取られたはずの魔力が、すっかり回復している。
「魔法の聖水だな……それをどこで?」
ディルはキットがそれをどこで手に入れたか気になっていた。が、次のキットの言葉でその真相が明らかになる。
「あの人間たちがたくさん持っていたんですよ。これで帰らずに済みます」
「あいつら、そんなもん持ってやがったのか。でも、どうやって?」
「倒した直後にスルリ、ですよ」
キットは自分の懐に手を差し入れる動きをしながら、二人にそう説明した。
「……すげえ」
「この程度の芸当はできますよ。それはともかく、行きましょう。敵にあまり時間を与えない方がいいでしょう」
「ああ、そうだな。よし、敵陣に殴り込みだ……」

キースたちは回復を済ませ、いよいよ敵の頭がいるであろう上り階段を上っていった。
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