Chapter 25-10
――二人は元々平凡な子供だった。何の不自由もない、ごく普通の民家に生まれたごく普通の子供だった。
両親は魔王軍の脅威をいち早く理解し、二人に幼い頃から戦いを教え込んだ。そのせいで、セルもルイも武器を持って敵と戦うことに何の疑問も抱かなかった。彼らはそれ以外は普通に暮らしていたし、それは幸せなものだった。
ところが、そんな幸せが魔王軍によって壊された。突如として現れた敵の謎の呪文により、二人の両親は跡形もなく消された。セルとルイは数え切れない敵に立ち向かった。ところが、その年齢にしては強いばかりに、二人はガルドスに目をつけられたのだ。
「私の力になるなら、両親は無事に返す」
それが誘い文句だった。
もちろん両親はもう生きてはいない。あの場で既に殺されている。だが、跡形もなく消し去られた場面を見た二人には、それが何らかの魔法で瞬間移動させられたのだとしか思えなかった。
そして、純粋な二人はガルドスの言葉を信じて、魔王軍の幼い戦士として利用されてきたのだ。
しばらくセルの啜り泣く声が聞こえていたが、やがて立ち上がり、手にしたペンダントを踏み潰した。
「……オレはもうあいつの部下じゃない……!」
その隣では、ルイがペンダントを燃やしていた。
「まず、レイドックの兵士に謝りに行こっか……」
「……ああ、悪いことしちゃったからな」
二人はゆっくりと、しかし確実にレイドックの城に歩いて行った。そして、彼らの瞳には、明るい光が戻っていた。
――再びガルドス。
「やはり寝返ったか……」
ガルドスは微かな声で呟いた。あのペンダントには闇の気を詰め込んでおいた。その気が途端に感じられなくなったからだ。
「貴重な戦力だったが……仕方がない。奴らには消えて貰おうか……むんっ!」
ガルドスが念じると、彼の前に四人の男が現れた。そして、現れた男たちはあまりにも、かつてキース達が倒してきたバスラ七衛兵のムザルに、ラビスに、ブラストに、そしてファライドに似ていた。
「あの二人を、殺せ……」
〜続く〜