Chapter 25-9
「……」


ここは闇の気が渦巻く魔城の最上階にある部屋。一人の男が椅子に座り、瞑目している。何を考えているのか、眉間に皺を寄せながら。

ガチャリ……バタン。

不意に、彼の後ろにあるドアが開き、しばらくの後閉じた。
「失礼いたします。キースとその仲間の動向について、ご報告いたします」
入ってきたのは若い男だった。その男は近況を話し始めた。報告が終わった後、椅子の男は一つ、大きなため息をついた。
「ご苦労。ああ、一つだけ聞きたい」
「?」
足早に部屋を去ろうとした若い男を呼び止め、その男は口を開いた。
「あの二人は――帰って来るのか? それとも帰って来ないのか?」
「申し訳ありませんが私には分かりかねます。ただ、彼らは先の戦いでキース達を苦しめました。これは確かです」
若い男は一礼すると、一言呟いて部屋を後にする。
「我らが主、ガルドス様に栄光あれ……!!」


後に残った男――魔王ガルドスは渡された何枚かの紙切れを再び手に取り、ぺらぺらと捲った。そして、ある記述に目を凝らし、ゆっくりとそれを小机に置く。
「全く……恐るべき成長速度だな」
そう言ったきり、ガルドスはまた瞑目して口を開かなかった。


そこから遠く離れた森に、あの二人がいた。

「なぁ、ルイ……」
「何?」
「オレたちのやってることって……正しいのかな?」
セルは先ほどまでかけていたペンダントを外し、右手で握り締めていた。ルイも同じようにペンダントを外している。
「何か……オレさ、あのキースってヤツがかっこよく思えて……」
「……でも、あたしたちはガルドス様の……!」
「止めてくれ!」
突然声を張り上げるセル。辺りは沈黙に包まれた。
「もう、嫌なんだよ。自分に……自分の気持ちに嘘をつくのが……っ!」
セルは地面の一点を見つめ泣いていた。
「セル……」
ルイはかける言葉を見つけられなかった。二人はまだ、その場に居残っていた。
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