Chapter 25-6
これは予想外な質問だった。突然現れた男が何故自分の名前を知っているのか。キースの思考は一瞬停止した。

しかし、気を取り直して相手に向き直り、告げた。
「……ああ、俺がキース=クランドだ。あんた、初対面なのに何で俺の名前を……まさか!」
言いながらキースは思い出した。シエーナの町での情報に、「敵はキースという人物を探している」というものがあったことを。
「ああ、先に言っておきますが、私は魔王軍とは無関係ですよ。ご安心を」
だが男はキースとは裏腹に、落ち着いた様子で話した。
「俺からも一つ質問したい。お前はレイドック城の兵士と戦ったか?」
次はディルが男に問うた。男はその質問にさらりと返した。
「はい。確かにレイドック城の兵士十二人ほどに囲まれたことがありました。つい先日の話ですが」

二人は考えこんだ。ますます分からない。この男の言うことが本当なら、レイドック城の兵士が言う敵とは一体誰のことなのか。

「さて、考え事の最中悪いですが、私と剣を交えて頂きたいのです」
「……俺が?」
「はい。あなたは自らをキースと言いましたが、私側としては、あなたがキース=クランドだという唯一の証拠があなた自身の証言では、完全に信用はできないですから」
「まあそうだな」
キースは頷いた。この男は全くの正論を述べている。敵かどうかは別として。となれば、キースに反論の余地は無かった。
「分かった。あんたの言う通りだ、戦おう。ディル、悪いけどちょっと離れててくれ」
ディルはやや後退し、二人の戦いを見ることにした。

「では、お手柔らかに。これはあくまで私側の勝手な要望ですから、もし不都合があれば即座に戦いを中断して構いません。また、私はあなたを傷つけたり殺したりする意図は全く無く、戦いの後にあなたの負った傷を全回復させることをここに約束します」
「……分かった。なら、始めるか!」
二人は一定の距離をとって向かい合う。その様子を、ディルは少し離れた所から見ていた。
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