Chapter 25-1
翌日、まだ日も出ない真っ暗なうちから、二人はシエーナの町を出た。宿を出る時、あまりに早すぎたので少し怒られたりしたが、ぼやぼやしていると敵に居場所を感づかれ、シエーナの町人に危害が加わる。

二人は西の大陸につながる橋を渡るまで、全力疾走した。彼らの速さを敵も捉えきれず、一度も敵に出くわすことはなかった。
橋を渡って岩山沿いに北にしばらく進んで行くと、左手に見えていた岩山がやがて退き、鬱蒼と茂る森林が姿を見せた。
「闇討ちならできるかもしれないけど……どうだろうな?」
「でも、これだけ巨大だと探すのに骨が折れるぜ……?」
二人はひとまずこの巨大な森林は後回しにして、右手に見える林程度の場所を調べることにした。

辺りがうっすらと明るんできた頃、ディルが何かを見つけた。
「おーい、井戸があったぞ、こっちだ!」
「何? 本当か?」
キースがディルの元に戻ってくる。確かに、少し先には井戸があった。
「よし、飛び込んでみよう」
「ああ、敵の根城があるかも知れねえ」
二人が井戸に向かって駆け出した、その時だった。

「待て、この先には行かせないぞ!」

二人を引き留める声がした。男の声と判断するには、少し幼い。見てみると、年は10歳程度、手には剣を持ち、さらに横には同い年ぐらいの女の子もいる。
ディルはため息をついた。こういうのが一番厄介なのだ。
「何だ、君たちは。この井戸を守ってるのか?」
「馬鹿にするな!」
「あたしたちはガルドス様に永遠の忠誠を誓った兄妹、セルとルイよ!」
「「何だと!?」」
二人は驚愕した。まさか、まさかこんな幼い子供までも部下として扱うとは。
「卑劣な手を使いやがって……」
子供は純粋で、命令しやすい。恐らくはそこにつけ込んだのだろう。

「……くそっ」
キースは仕方なく、とりあえず剣を構えた。
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