Chapter 22-9
「う、うそだろ……!?」
キースは絶句した。魔物に襲われたとは考えにくいし、別の場所に飛ばされたというのも有り得ない。ディルが戻ってきたからだ。
「……この書き置きが井戸に留めてあった。俺はまだ読んでない。あいつらと付き合いの長いお前が最初に読むべきだと思ってな」
キースは震える手を抑え、ディルから受け取った書き置きをゆっくりと開いた。
綺麗な書体で書かれたクラリスの字と、どこか字を書くことに不慣れそうなアレクの字が混ざっていた。


『キース、ディルへ

あなたたち二人に黙っていなくなることを許して下さい。私たちは己を磨く旅に出ます。

僕たちはザルグやロームとの戦いを目にして、自分たちがあまりにも役立たずで足手まといであることを改めて実感させられました。今の僕たちではキースの旅について行く自信も資格もありません。

私たちがやったことはラルドみたいにはいかないかも知れません。私たちの強さでは、現れる敵に太刀打ちできる保証は全くないから。

それでも、僕たちは約束します。二人旅の間で何度つまずくことがあるか分からないけど、そのたびに這い上がって、必ずまたキースたちと共に旅をします。

私たちが帰ってきたら、殴っても蹴ってもかまいません。それでこの行いが償えるのなら、甘んじて罰を受けます。

それでは、二人ともお元気で。

アレク=セレイス、クラリス=メリー』


キースは一文一文を丁寧に読み返した。

「……ふっ」
「……なんで笑ったんだ?」
「いや、あいつらの改まった文面見たらおかしくてな。まったく、殴ったり蹴ったりなんかするかよ……」
「…………」
「……むしろ、よく俺のわがままに今まで付き合ってくれたよ。あいつらが選んだ結果なんだ。どうなっても二人は戻って来るさ。そして、俺たちは最後に笑う……それが、この旅の答えだ」
「……そうか」
キースの顔は明るかった。つられてディルも笑う。そして、二人は井戸を見つめた後、天を仰ぎ、声を揃えて言った。

「「………じゃあな!!!」」


〜続く〜
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