Chapter 22-8
ダーマ神殿跡に向かい、四人は無言で歩く。しかし、キースは違和感を感じていた。
別に会話がないこと自体がおかしいのではない。
(……アレクとクラリスが、何かやろうとしてんな)
そっと二人を見るキース。確かに顔が強張っているし、歩き方もどこかぎこちない。
(ま、神殿跡に着いてから聞いてみるか)
キースも最初はその程度にしか考えていなかった。

「お、見えてきたぜ?」
ディルが見つめる先には、見えるか見えないか微妙な建物がある。ディルは視力が良いのだ。
それからまた暫く歩き、いよいよ神殿の前に来た。

「うわっ……ひでぇ……」

四人は顔をしかめた。今までに見てきた建物の中でも、かなり朽ちている方に入るのではないか。外壁はもはや見る影も無く、内部が丸見えである。神聖な神殿の悲惨な現実だった。
「時間の流れって残酷よね……」
「僕たちには分からないほどの時が経ってるんだね」
「井戸……か。例によって例のごとく、またここに飛び込めってか……よし、行こうぜ。よっと!」
何の躊躇いもなく、キースは井戸に飛び込んだ。そのすぐあとにディルが続いて飛び込んだ。

「なんだこれは……?」
飛び込んだ先で、キースは目を疑った。目の前に広がる森の中に、荘厳な神殿がそびえ立っていたのだ。
しばらく呆気にとられていたが、キースはこの神殿がかつてのダーマ神殿であること、そしてここが夢の世界だということに気がついた。
「なるほどな、あの神殿も、夢の世界じゃ立派に生き残ってるわけか」
ディルも神殿を眺め、そんなことをこぼす。

が、二人はそこであることに気づく。
「おい……あいつら、えらく遅くねーか?」
そう、アレクとクラリスが出てこないのだ。キースたちがここに来てもう数分、後を追って飛び込んできたとしても、もう近くにいるのが普通だ。
「そうだな……俺がちょっと見てくるよ。確かこの神殿の中にも井戸があるはずだ」
ディルが神殿に入る。後に続いてキースも神殿に入った。
しかし、井戸にたどり着いたが未だ二人の姿はない。仕方なくディルが井戸に飛び込み、現実の世界に戻った。

キースが井戸の前で待つこと数分、ディルが慌てた様子で外から走ってきた。その手に何かを持って。
「おい、二人は?」
キースはそう聞いた。しかし、この後のディルの言葉で、キースは言葉を失うことになる。


「あいつらが……消えた」
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