Chapter 22-6
「マジか、あんな、あんなバカなことがあるはずが……!」
ディルは我が目を疑った。が、キースの繰り出した右拳が、いとも簡単にロームを貫いたのを、この目で見てしまった。見間違いでもなければ錯覚でもない。
メタルハンターみたいな鋼鉄の体を砕くんだから、柔らかいロームの体は簡単に……と考えてはいけない。体が柔軟であれば、変形することによってエネルギーの大半を受け流せ、ダメージをかなり抑えられるからだ。
しかし、キースの正拳突きはそれさえ許さなかった。超高速のストレートパンチは、変形する間を与えなかったのだ。
「グ……グワァ……」
真空波の傷がまだ癒えていないロームは、明らかに弱っていた。

「まだこんなもんじゃねぇぞ!」
キースは続けて回し蹴りを放つ。さらにたたみかけるように爆裂拳。
「キースがあれだけやってるんだ……俺にも、何かができるはずだ!」
ディルはキースの剣を引き抜き、ロームに向かって走っていった。
「二刀流……!」
「そうよ、あの二人には私にできないことをやってほしかったのよ……」
クラリスは微笑みながらつぶやいた。さっきとはまるっきり表情が違っていた。

「この剣、軽いな……そうか、あいつが持っていたのは精霊の剣だったのか……!」
ディルはそんな言葉をつぶやきながらもロームに斬りかかる。
キースの重みのある攻撃と、ディルの二刀流による高速の剣さばきには、さすがのロームも再生が追いつかなかった。体は徐々に大きくなりつつあるが、再生速度は衰えてきていた。そして。

「今だ! キース、避けろ!」
一旦助走をつけ、ロームに向かって走っていくディル。キースが横に逃げると同時に、彼は血を出して苦しむロームに、両手の剣を十字に振り抜いた。
「……クロス・ブレード!」
「グァ…………ッ……」
ロームの血がこれまでにない勢いで吹き出した。ついに、小さな心臓を捉えたのだ。
「「…………」」
「ディル、お前……」
「……ふぅ。キース、こいつは返すぜ」

ロームはそのまま動かなかった。そして、乱暴に投げられた剣を、キースはしっかり受け取った。
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