Chapter 21-12
「その生物の名前はローム。皆さん気をつけて下さいね……」

女性の言葉を聞いて四人は館を出た。そして、全速力で走り出した。
恐るべき早さで育ちつつあります、彼女はそう言っていた。それはつまり、一分一秒でも早く行った方が倒しやすい、ということだ。

しかし、橋を渡った頃から四人の走力に差が出て来た。
ディルが先頭を走り、そのすぐ後ろにキース、やや離れてアレク、そして最後尾はクラリス。
「ディル、速すぎる! ちょっと落とせ!」
キースが前のディルに声をかけた。
「なんで? ちょっとでも早く行った方が良いんじゃなかったのか?」
「いや、四人が離れてる今、もしさっきみたいなことになったら太刀打ちできねーよ。一人でも欠けてたらダメなんだからな。それに、敵にたどり着いて息あがってちゃ戦えねーだろ?」
キースの言葉に、ディルは頷いた。
「分かった」
二人は足を止めた。

数秒遅れて、アレクとクラリスが追いついた。
「はぁ、はぁ……二人とも速すぎるよ……」
「そうよ、ちょっとは私たちのことも考えてよね……はぁ……」
愚痴を並べる二人に、キースは「悪い悪い」と笑った。
(俺が旅に戻ったとき、俺ひっぱたいて「旅の間女だとか関係ない」って言ってたのは誰だよ?)
そんなことを心の中で考えたが、口には出さなかった。
「よし、洞窟も目の前だ、行くか!」
四人は歩き出し、洞窟に入った。

中に入ると、ひんやりと肌寒かった。天井からは美しい色の柱が無数にぶら下がっている。
「今は余計なこと考えてる時間ねーな、早く奥に行こうぜ!」
キースの言葉に三人は頷き、洞窟を進んでいった。

しばらく進むと、広い部屋に出た。どうやらここが最深部のようだ。
そしてその奥で、何か生き物のようなものが壺のようなものの中にある液体を飲み漁っていた。
しかし、こちらに気づいたようで、その生き物はゆっくりこちらに近づいてきた。

「……何だよアイツ、気色悪いな」
さすがにディルも顔をしかめた。
「あれがロームね……行きましょ!」
クラリスが声を張り上げる。
「よし、すぐに片付けてやるぜ……!」
そしてキースは、不敵な笑みを浮かべながら剣を抜いた。


〜続く〜
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