Chapter 21-10
大魔神の群れの中、逃げ損ねたクラリスは額に冷や汗を浮かべていた。

(まずいわね……レムオルを唱えてもこの数だもの、闇雲に攻撃されたらおしまいよ……)
クラリスは必死に考えを巡らせた。こんなところで諦める気はさらさらない。
しかし、そうしている間にも大魔神たちはじりじりと寄ってくる。
「賭けてみるしかないわね!」
クラリスは上を向き、両手を空に掲げた。

「……イオナズン!!」

大爆発により、大魔神たちが一瞬怯む。クラリスを取り囲む輪が広くなった。

「ルーラ!」

クラリスはすぐさま呪文を唱える。彼女の空高く舞い上がり、無事に三人の元に着地した。
「……帰ってきたわよ!」
クラリスがにっこりと微笑む。
「クラリス! 無事で良かった……」
「そうだね。それにしてもよくあの状況でイオナズンなんか唱えられたね」
「……待て! おしゃべりは後回しみたいだぜ……」

ディルが再び剣を抜き、構えた。
そう、先程の大魔神たちがクラリスをはじめ、四人を取り逃がしたことに怒り、全速力で突っ込んできていたのだ。それなりの距離はまだあるし、大魔神たちの動きもそれほど速くないのだが、こちらから仕掛けるにはあまり猶予がない。
「どうする……アモールあたりに飛ぶか……?」
「ああ、この数でこの敵だ。大魔神を相手に一人五匹は無理じゃねえか?」
「でも……ダメよ。逃げられないわ」
クラリスが後ろを振り返った。そう、彼らの後ろには。

「「「「サンマリーノ……!!」」」」

この世界でも屈指の港町である。当然人口は多く、戦えない人が大半であろう。
そんな所に大魔神二十匹がなだれ込もうものなら、サンマリーノは一日足らずで廃墟と化すに違いない。
「まずいな……ああもう、何かこっちじゃなくて向こうを飛ばす呪文はねーのか?」
キースは少しイライラしていた。多勢に無勢のこの状況では、自分に何もできないことが歯がゆいのだろう。
「飛ばす……! あった、あったけど……!」
アレクが口をつぐむ。
「何だ?」
「どこに飛ぶか分からないんだ。もしどこかの町の近くに固まって飛んでったら、結局は無意味だよ……!」
「いや……全部じゃなくていい。三匹、そのぐらいでいいから飛ばせ!」
「わかった……バシルーラ!」

アレクがそう叫ぶと、先頭で突っ込んできていた大魔神四匹の体が浮き上がる。四匹はそれぞれ、ばらばらの方向に飛んでいった。
「よし、でかした!」
キースとディルが進み出る。その間にクラリスが真空波で足止めをする。ここにきて、四人の息がさらに合ってきた。
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