Chapter 21-9
船を進めていくと、やがて大陸の先端にある港町が見えてきた。
「おっ! 町だぜ」
「港町みたいね、行ってみましょう」
四人は船を町からすぐそばの岸につけ、町に入っていった。
「賑やかだな……」
第一の感想である。人の声が途切れることなく、また皆忙しそうに動き回っている。
「こんなに賑やかな町はめったにないよね」
「ああ、特にゴタゴタもなさそうだな。で、どうすんだ、キース?」
ディルが口を開いた。
「ここに何もないなら、ちょっとだけ遊んでいくか? せっかくディルも一緒になったんだし、ちょっと美味いもん食ってもいいと思うんだけど」
「そりゃいいや!」
アレクが食いついた。
「港町なら、きっと魚が美味しいよ。みんなで食べよう、ね?」
「俺あんまり食ったことねえんだけどな。ま、なんだっていいぜ」
「カジノもあるみたいだしな、よし、それじゃここで一泊するか」
そういうわけで、四人はサンマリーノで一日を過ごした。予想に違わず魚料理は絶品で、あまり食べたことがないというディルも舌鼓を打った。そして夜は少しばかりカジノに出向き、スロットマシンやポーカーに興じた。
翌朝、四人はサンマリーノを後にし、南に向かった。すると、何か小屋のようなものが見えてきた。
と、その時。
前方から、無数の手のようなモンスターがわらわらと現れた。
「ちっ…来やがったか」
キースとディルが剣を抜いた。マドハンドがざっと二十匹である。アレクとクラリスもすぐさま戦闘体制に入った。
その時、マドハンドたちが一斉に動いた。
「「「「???」」」」
すると向こうから、ズシン、ズシン、と大きな地響きが聞こえてきた。そう、キースたちはマドハンド二十匹、そして大魔神二十匹に周りを囲まれてしまったのだ。さすがの四人も、背筋に冷や汗が流れた。マドハンドはともかく、大魔神は一匹でも手こずる強敵だ。それがこれだけの数いては、勝ち目は薄い。
「とにかく雑魚は片付けるわよ! 真空波!!」
クラリスの攻撃でマドハンドは全滅させた。しかし、大魔神たちはじりじりと四人に迫ってくる。
「……だめだ、逃げよう! みんな、僕につかまって!」
アレクがそう判断し、皆を呼び集めた。三人はすぐさま駆け寄る。
「ルーラッ!」
空に舞い上がった体は、サンマリーノの前に着地した。しかし、アレクが辺りを見回して顔を青くさせ始めた。
「ク……クラリスが残ってる!!」
「「何っ!!?」」
キースとディルは振り返った。微かに見える大魔神の群れは、その中にいるであろうクラリスの姿を完全に覆い隠していた。