Chapter 21-8
船で村に戻った四人は、ザルグを討ったことで船を与えられ、さらに今日一日長老の家に泊めてもらえることになった。四人にとって、これは大きなご褒美だった。

長老の家は豪華な設備で、出てくる料理も美味しければ、ベッドはふかふかで穏やかな眠りを誘ってくれるものだった。

――その夜。

部屋に設えられたテーブルを挟んで向かい合う人影が二つ。アレクとクラリスだった。
「ええっ!? そんなこと」
「しっ、静かに! 二人が起きるじゃないか」
アレクが慌ててクラリスの口を塞いだ。
「ごめんなさい。あまりに突然だったから驚いちゃって……」
「……まあ、クラリスがびっくりするのも無理ないからね。とにかく二人が起きなくて良かったよ」
アレクが寝ているキースとディルを横目で見た。二人とも、こうして見ると意外に寝相が良い。戦いに疲れ果てて、とても深い眠りについているのかも知れないが。
「……アレクの言うことも分かるけど、私は賛成出来ないわ。あの時がどれだけ辛かったか忘れたの?」
クラリスは首を横に振っている。
「確かにそうかもしれない。だけどね…」

その後、二人の話は夜遅くまで続いた。


翌朝。

「あー、よく寝たぜ……!」
「俺もだ。あんなによく眠れたのは初めてじゃねえかな」
眠りこけていたキースとディルがゆっくり伸びをした。
「よく眠れたわ……」
「うん、気持ちいいベッドだったね」
アレクとクラリスも快眠だったようだ。
四人は朝食をとり、長老にお礼を言って家を出た。

村の外に着けてあった船に乗ると、船はキースたちを持ち主だと認めたのか、誰が操ることもなく動き始めた。

「さーて、まずはどこに行こうか?」
「この先の大陸に行かないかしら?」
「うん、僕もそれで良いよ」
「ちょっと待った」
クラリスとアレクの意見に、珍しくキースが口を挟んだ。
「まだこっちの城に行ってないぜ?」
キースは地図上でゲントの村の南にある城を指差した。
「でも、せっかくこんな立派な船が手に入ったんだし、ちょっと船旅してもいいんじゃない?」
「そうよね、お城があることは覚えておいて、またしばらくしてから来てもいいと思うわ」
アレクとクラリスが同調しているようだ。キースも、ここまでついてきてくれた二人のことを思うと、彼らの意見を尊重してもいいのではないかと思ったらしい。
「それもそうだな。よし、先にそっちに船旅としゃれこむか! 面舵いっぱーい!」
キースが笑いながらそう言った。クラリスは微かに笑みを浮かべ、すぐに表情を戻した。

「?」

ディルがそれを見て、不思議な顔をしたのは誰も知らない。
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