Chapter 21-5
「これで分かったか? 本気になった私と貴様ら四人では実力の差は歴然なのだ。最後のチャンスをやろう。私に従え。ならば命だけは救ってやろう。特にディル、お前にはまだ教えることが山ほどあるのだ」

キースは耳を疑った。
「どういう意味だ……?」
「こやつを鍛えたのは他の誰あろう、私だ。師が子に敗れるとでも思うのか?」
その言葉を聞いて、ディルは身を固くした。
(……確かに俺をここまで強くしてくれたのはこのザルグ……それは言い逃れ出来ない事実だ……)
「なるほど、ザルグとディルは師弟関係にあったわけね……」
「因縁の戦い、ってことだね……」
アレクとクラリスが呟いた。
ディルは下を向いていたが、やがてザルグを見据えて言い放った。
「それでも俺は、お前に全力でぶつかる! お前が倒れるまでは、俺はひたすら戦い続ける……!」

ザルグの眉がわずかに動いた。

「……残念な答えだな。貴様らは一筋の光を自ら断ったのだということが分からないようだな……!」
「光……? デタラメ言ってんじゃねーぞ……」
「……何?」
「俺たちがお前に従ったところで、先に待つのは闇以外の何物でもねーぜ! 俺たちが求めるのは光だけだ!!!」
キースの出すオーラが激しさを増した。
「貴様……まだ本気では無かったと言うのか?」
「んなわけねーだろ、今までも本気だったさ。でも俺は、仲間のためなら……いくらでも強くなれんだよ!!」

キースが空を切るように、剣を振った。
「!!!」
突然、ザルグの右頬から一筋の血が流れた。
キースとザルグの距離は十メートル以上離れていたにもかかわらず。
(あの距離から剣圧で私に傷を……?)
ザルグは驚いた。
「行くぜ。俺はお前を倒して、ディルを救う!」
「……面白い。ならばやって見せて貰おうか!」
キースとザルグは距離を取って向き合った。

(お前を倒して、ディルを救う!)
(キース……)
その様子を見ているディルの頭の中には、先のキースの言葉が駆け巡っていた。
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