Chapter 13-7
ふもとの小屋で一夜を明かし、いよいよ三人は険しいマウントスノーの山を登り始めた。

徐々に寒さが増して、指先が動かなくなる。ネクロゴンドよりも厳しい環境だった。
まさかこんなところに敵は出ないだろうと思っていた三人だったが、そう甘くはなかった。

「ギギャアアアア!」
ストロングアニマル二匹が襲ってきた。かなりの巨体に、足が竦む。
しかし、クラリスがずいと前に踏み出し、両手を前に突き出した。
「ヒャダルコ!」
氷の柱は確実に二匹を捉えた。だが、ここは寒さの厳しい地域。普段の気候に慣れているのか、敵は何食わぬ顔でクラリスに突っ込んできた。もはや防御は不可能である。

「クラリスっ!!」
そばにいたキースの足はひとりでに動いた。気がつけば、彼はクラリスに覆い被さっていた。その背中を、無防備に魔物の牙に晒して。

と、その時だった。
激しい戦いで、大きな雪崩が起こったのだ。キースはそれを見たが、クラリスに覆い被さるのを止めはしなかった。

「キース、クラリス!!」

アレクの目の前で、二人は雪崩に飲まれた。

しばらく、辺りは静かだった。
アレクは耳をすませる。魔物たちの声は聞こえない。どうやら、あちらも雪崩に巻き込まれたようだ。
と、眼前の雪の塊がもこもこと動き始めた。アレクが注意深く様子を窺うと、やがて雪の中からクラリスが出てきた。
「クラリス! 無事かい?」
「ええ……だけどキースがいないの」
クラリスは無傷だった。が、キースの行方がわからない。
二人は辺りの雪を慎重に見回し、キースを探す。しかし、その必要はないことがすぐにわかった。

「おーい、こっちこっち!」
山の上の方で、キースが二人に手を振っていた。
「村が見えたぞ! もうすぐだ!」

いつの間にあそこまで登ったのか。ともあれ、無事でよかったと安堵の息をついた二人。キースの元気な姿に、アレクとクラリスは笑い合って歩いていった。
「やっぱりキースは強いね……」
「ええ、私たちの想像以上にね……」


マウントスノーの村は寒さ厳しいところではあったが、村人たちのおかげで温かな一日を過ごすことができた。キースがバスラを倒しに行く事を告げると、村人たちは三人を大歓迎。宿を無料で提供すると言われるまでの歓待ぶりであった。もちろん、それはさすがに悪い気がするので、格安でということにはしてもらったのだが。
そんなおかげで、三人は体力をしっかりと回復することができた。


翌日。
三人の目の前には、洞窟の入り口がある。この奥に、諸悪の根源、バスラが潜んでいるのである。

――感じる。この奥に、奴がいることを。
キースの目つきが変わった。

「よし、行くぜ!!」
「「うん!!」」

三人はついに、氷の洞窟に足を踏み入れた。間もなく生死を賭けた死闘が始まるであろうことを考えながら――。


〜続く〜
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