Chapter 13-6
一晩経ってクラリスも落ち着いたようで、三人は明朝にガンディーノを出た。

昼にはロンガデセオに着くだろうと、別に急ぐわけでもなかったのだが自然と早足になってしまうもので、メガザルロックやアックスドラゴンに苦しみながらも、なんだかんだで昼前にはロンガデセオに着いた。

「思ったより早く着いたな。にしても疲れたぜ……」
「うん、あのメガザルは厄介だったね」
「苦労して倒した敵が生き返るのにはげんなりしたわね……」
口々にぼやく三人。そうして町に入ろうとすると、入口に立っていた強面の男に止められた。
「ここはならず者の町、ロンガデセオだ。町に入りたかったらパスを見せろ」
「えっ? パスってなんだ?」
「決まってんだろ、パスだよ。デセオのパス」
キースに、男はずいと手を差し出す。いかにも、パスをさっさと出せと言わんばかりだ。
「……パスって知ってる? クラリス」
「私が知るわけないじゃない、この世界にだって初めて来たのよ」
男に聞こえないよう、小声でやりとりするアレクとクラリス。
「どうした、まさかパスを持っていないのか? なら町には入れられねえな。帰ってくれ」
凄みのある男の声に押される三人。どうするべきか、迷っていると。

「……? おい、ちょっと待て。そっちの女、お前まさかクラリスか?」
「!!」
こそこそとアレクと耳打ちをしていたクラリスは、男の突然の言葉にはっと驚いて顔を上げた。この男、自分のことを知っている。おそらくはグループの息がかかった人間なのだろう。
どう答えるべきか逡巡したが、隠したところでだと思い、正直に頷いた。
「……そうだけど」
「なんだよ、そうならそうと早く言えってんだ。よくこんな所まで来たな、ほら入れよ。おう、そっちの連れも一緒でいいぜ」
クラリスだと分かったとたん、男は手の平を返した。すっと道の脇に退き、三人を町の中に招き入れたのだった。

「……すげー、顔パスじゃねーか」
とキースが漏らす。これには、クラリスもただ苦笑を返すほかなかった。


町に入ると、確かに賑やかさはあった。
しかし、町は複雑に入り組んでおり、何回か迷った。一方で、迷って入った建物内では世界地図を入手したが、これは嬉しい誤算だった。
そして桟橋に行くと、なんとも奇妙な看板があった。

『この先西に行くと船着き場。定期船は無料です。自由にお使い下さい。行けたらの話ですが』

「……ロンガデセオに港なんてあるかしら?」
「いや、地図で見る限りは内陸の町で、海からは結構遠いぞ?」
「ってことは……」
やはり三人の考えは当たった。外を歩いていかねばならない。看板に書かれていたことの意味が分かった。
だが、幸運にも敵があまり出なかったこともあり、目立った戦闘をすることなく、三人は楽に船着き場にたどり着いた。

「おお、久しぶりに客が来たぞ! いらっしゃい。この定期船はマウントスノー行きだ。乗るかい?」
船員は三人を笑顔で歓迎した。よほど久しぶりの客だったのだろう。
その様子を見ると、ここで断るのは悪い気がするし、何より目的地も決まっておらず、行ける場所が限られていたので、三人は船に乗ることにした。
――ならず者の町の船よろしく、海賊船のような雰囲気を醸し出したその船に乗るのは、いささか気が引けたのだが。


数日の航海を経て、マウントスノーのふもとらしき場所に着いた。
船乗りに聞いたところでは、ここからは途中の小屋で休みつつ、徒歩でマウントスノーまで行かねばならないらしい。が、登山ならネクロゴンドで経験済みだ。三人は臆することなく歩き始めた。

ふもとの小屋までは、船を降りた場所からすぐだった。小屋に着くころには、辺りに雪がちらつき始めていた。吹雪にならないうちにと、三人は小屋に落ち着いた。
しかし、その小屋の中にいた人たちの会話で、衝撃的な言葉が飛び出した。

「マウントスノーの村、大丈夫かな? なんでも、ここ最近から山にバスラとか言う奴が潜んでるらしいんだよ」
「そりゃ大変だ。心配になってきたな……」
二人の旅人の会話を盗み聞きした三人は拳を握り締めた。

「やっと追い詰めたぜ……! 待ってろ、バスラ……今度は俺たちが勝つ!」
キースは勝ち誇ったように微かに笑った。
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