Chapter 13-5
「でもやっぱり……クラリスには僕たちを頼って欲しいんだよね……なんか寂しくてさ」
アレクの声は沈んでいた。

しかし、それとは対照的にキースは明るかった。
「まあ、人には話したくない秘密ってもんがあるんだよ。ラルドだって、俺との関係を話したがらなかっただろ?」
「なんで分かったの……?」
「あいつとは長い付き合いだしな。大体の性格とかはつかんでるよ。俺たちだって長い付き合いとは言えなくても、ある程度はお互いを分かってると思うんだ。クラリスのことだ、きっといつか話してくれるさ」
「うん、そうだね……分かったよ」


クラリスは足取り重く城から出て来た。
二人はクラリスを見つけると、駆け寄ってきた。
「どうしたんだ? 何を話してた?」
「……不思議と今話す気になったわ……お願い、私に一日だけくれない?」
二人は顔を見合わせ、頷いた。


宿に着くと、一番に口を開いたのはクラリスだった。
「私は王様に、この国にキルズグループがあるかどうかを聞いてきたわ」
「「キルズグループ?」」
「ええ、世界でも有名で恐れられている暗殺グループ。私の父は、そこに所属していたのよ」
「そんな……」
「私の母は、父と駆け落ちをした。だから、父はグループを無断で抜けなければならなかった。私は二人が駆け落ちしてすぐに生まれたのよ」
「……」
「でも、キルズグループが黙っているはずはない。両親の居場所を突き止めて、母を殺した……」

そこまで言って、クラリスの声は震え始めた。

「父は組織に戻された。私は行く所がなかったからグループの人たちに育てられたの。さっきの人だって、私は知っているわ。でも、二人がいたから、あえて白を切ったのよ……それで、しばらく経ってキルズグループは解散して、世界各地におかれたの。私はそんな組織にいた父が怖くなって家出をしたの。そのすぐ後にバスラと戦って、あなたたちと出会った……」

「……なるほど、だから家のことを喋りたがらなかったのか」
キースは納得したように言った。クラリスの言葉が事実なら、彼女の家出の理由も説明がつく。
「待って、クラリス。クラリスはこの世界に来るのは初めてなんだよね?」
アレクが話を止めて、気にかかることを訊いた。
「ええ、そもそもこんな世界があること自体、来るまで知らなかったもの」
「だったら、どうしてこの世界に君の知ってる人たちがいるの? 彼らはどうやってこの世界に来たんだろう?」
「……そこがわからないわ」
クラリスはしばらく考えた後、答えた。
「ただ、グループの力は未知数なの。特に上の層……幹部クラスになると、何か不思議な力を持っているなんて話は聞いたことがあるわ。それに、それこそバスラみたいな闇の勢力と、裏で手を結んでるなんて噂もあった。もしかしたら、この世界に来る方法も、そうやって知ったのかもしれないわ」

「だとしたら、僕たちはキルズグループってのも敵に回さなきゃならないかもしれない、ってこと……?」
「待てよ、じゃあ最悪、俺たちはクラリスの親父さんとも……? なんてこった……」
恐る恐る口にするアレクと、頭を抱えるキース。仲間の親と敵対するかもしれない、その可能性を考えると、彼らはそれ以上言葉が出てこなかった。

「……できれば、思い出したくなかったわ。でもまさか、こんなところで見つけてしまうなんて」
「……クラリス、泣いてる?」
「えっ?」
クラリスの顔を見て、アレクが言った。クラリスはそっと自身の頬に手を当ててみる。すると、確かに涙が伝っていた。
「あれ、どうして。悲しいわけでもないのに……」
クラリスは笑いながら、頬を拭った。
「ああでも、待って。ごめんなさい、なんだか頭が混乱しちゃってて。どうすればいいか……あれ、止まらない……」
クラリスの目から、涙が次々と流れ落ちる。慌てたように、クラリスは頬を拭い続ける。そんな彼女を見て、キースは肩をそっと叩いた。
「お前は……俺たち以上に苦労してたんだな……よく分かったよ」
「キース……」
「今は俺たち以外誰もいないし、チャンスだ。泣きたい時は泣く! レグルスおじさんの受け売りだけどな」

キースの言葉に頷いて、クラリスは押し殺すように嗚咽し、肩を震わせた。
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