Chapter 13-1
クリアベールを発った三人は、そこから東の海底洞窟に足を踏み入れていた。
洞窟内部はやはり、最近開通したとあってきちんと整備されており、一本道だった。

敵も出て来ないようなので、いろいろ話しながら歩いていた。
横一列に並び、歩いていた時だった。

ドスッ!!

「「???」」
アレクとクラリスが顔を見合わせる。
「何の……音?」
「さあ……分からな……きゃあああああっ!!」
クラリスが悲鳴をあげて座り込む。その視線の先には、腹に刃物が深々と刺さって倒れこんだキースの姿があった。
「ぐぅぅぅ……!」

「キース!!」
アレクが駆け寄って即座にベホマを唱える。
しかし、傷はすぐに塞がらず、傷口からは鮮血がどくどくと流れている。

「あれ? もうおしまいか?」
低く笑う声が響く。
カツカツ、と後ろから歩く音が聞こえた。振り向くと、黒い服に身を包んだ男が立っていた。手には赤黒く光る短剣が握られている。
(あいつがキースを? ……でも、後ろから歩いてきたからあんな短剣じゃ届かないはず……)
「お前がキースを刺したんだな!?」
アレクは頭をフル回転させながら相手を威嚇する。
「ああ、私だよ。私は魔王軍特攻部隊暗殺隊長、レジェス。君たちにも死んでもらうよ?」
レジェスは短剣を上に放り投げた。
「……フラシグ!」

「なんだと!?」
アレクは驚愕した。まさか、フラシグは自分が編み出したオリジナル呪文のはずだ。それをどうして、目の前の男が使えるのか。
「お前の戦いをこっそり見ていたことがある。この程度の芸当なら私にもマネできる」
「くっ……!」
「もう許せない!」
クラリスは飛び出したが、アレクがそれを制した。
「待って、クラリス落ち着こう。奴に飛びかかっても……返り討ちだ」
短剣はもう自分の近くまで来ている。とにかく、まずはこれをなんとかしなければ。
「フラシグ!」
アレクは短剣に手をかざした。短剣はくるりと向きを変えてレジェスに戻っていく。
「……やはり、本家本元にはかなわないということか」
「僕の専売特許だとでも思ってたけど……違ったみたいだね」
飛んでいく短剣。
レジェスは、臆することなく短剣の刃を掴んで叩き落とした。彼の右手からは、血がにじみ出ている。

「なるほど……ならば手加減はいらないな!」
レジェスはそう言うと、周りに結界を張り巡らした。
「……メラ!」
試し撃ちしたアレクの呪文は、やはりレジェスの前の結界でかき消された。

「私……どうすればいいの……」
「さあ……絶体絶命だね……」
そのとき、低い笑い声があがった。それは意外な人物からだった。
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