Chapter 11-9
長い洞窟を抜けたと思えば、そこは室内になっていた。
しかも、なかなか広い。

「ここは……?」
キースがきょろきょろと辺りを見る。
「ここはゼニスの城。天界を治めるゼニス様の居城です」
そばにいた住人が親切に教えてくれた。
「あ、ありがとうございます」
アレクは礼を言った後、どうするかキースにたずねた。
「こういう所に来たときは、まず王に会うべきだ」
ラルドが淡々とした口調で話した。


「よくいらっしゃいました。私がゼニス。天界を束ねる者です」
ゼニスは物静かに話す。

「すみません。つかぬことをお伺いしますが……」
キースが切り出した。
「はい?」
「ここは、どこか別の場所に飛んだりしませんか?」

一瞬の沈黙。そして、ゼニスは静かに口を開く。
「よく……ご存知ですね。確かにこの城は次元を渡り、別世界に飛ぶことが可能です。でもどうしてそれを……?」
キースは笑っていた。
「いや、俺たちは旅に行き詰まってて……ここからまだどこかに行けるはずだ、と思っただけです。なんとなくですよ」
「そう…ですか。それでは、新たな世界にお送りしましょうか?」
「はい、できるならお願いします!」
クラリスが頭を下げた。

城の中枢部にやってきた五人。そこには、妙なスイッチがあった。
「これを押せば、この部屋にいる方のみが、別世界に飛べます。ただし、そこが未来か過去かは全くわかりません。ただわかるのはこの城に飛ぶ……というだけです」
そう言い残してゼニスは部屋を出ていった。
そして、その後ろにラルドもついていくではないか。

「ラルド?」
アレクが呼び止めるが、ラルドは振り向かない。
ラルドはそのまま、背中越しに告げた。
「最近の戦いで、俺は自分の無力さがわかった。悪いがしばらく修行に出ようと思う。お前たち三人なら心配ない……本当に俺が必要になった時が来たら、駆けつけよう」
ラルドはそう言って部屋を出てしまった。

「キース……?」
クラリスが心配そうに言う。
「仕方ないな……でもあいつは必ず……強くなって帰ってくるさ」
キースの指はスイッチを押し込んでいた。同じ家で育った者だからこそわかるラルドの思いが、キースには分かっていたのかもしれない。その指に、躊躇いはなかった。

ガタン、と音を立てて三人のいる部屋が揺れ始めた。それは次第に小刻みな震動となり、やがてドアが開かなくなった。そして三人はそのまま、奇妙な音とともに、部屋がぐにゃりと歪むような感覚に飲み込まれていった。


〜続く〜
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