Chapter 11-6
アリアハンを出た四人は、旅の手がかりが無いことに気がついた。アリアハンは世界最大の貿易都市。つまり、手がかりを得る確率は一番高いわけだ。
そこで、もう少し情報を集めてみようということで、出発してからすぐに引き返し、アリアハンの城下町に留まることにした。

「あ、アルスの石碑……」
クラリスが呟きながら眺めた先には、彼らが二回目に見る勇者アルスの像があった。しかし、以前には無かった石碑が像の前に出来ていた。
そこには、こう記されていた。

『彼は異界ではロトと呼ばれ、数々の偉業を成し遂げた。そして、竜の住む城より光に昇り、ついに天界への扉を開いたのである』

「これは……僕らが王様と話をしたから作られたのかな?」
「そうかもしれないな」
と、アレクとキース。
「この人の子孫なのよね、キースは……」
クラリスも思い出したように言う。
「キース、お前ロトの子孫だったのか」
ラルドは意外なようだ。無理もないだろう。
「ああ、どうもそうらしいんだ。まあ、俺は特別何かが変わるわけでもないと思ってるんだけどな」
「わからんぞ。ロトの子孫だから、バルシドーに完全に操られることもなかったんじゃないか?」
「さあな、俺にしてみりゃ操られる時点で……。それより、これ、気にならないか?」

キースは石碑の『竜の〜』の部分を指差した。
「この城に行ってみたいんだ。みんなは多分行ったことがあるかもしれないけど……頼む」
キースは軽く頭を下げた。

アレクを始め、あとの二人も頷いた。これは大きな手がかりだからだ。アレクたちは、この世界のすべての大陸を踏破した。訪れていない国はほとんどない。
もしこの竜の女王の城という場所が天界に通じるというならば、行ってみる価値は大いにあるだろう。
なぜなら、闇は光を封じ込めようとするからだ。バスラが既に、天界に何か攻撃を仕掛けている可能性がないとは言えない。

「じゃあ……ルーラ!」
アレクが唱える。四人は風を切るような速度で空を飛び、あっという間に竜の女王の城に着いた。
周りは岩山で覆われているが、ネクロゴンドのそれと比べると幾分緩やかな山地といったところか。かつて三人が来られたのも、あまり起伏の激しくない山道をたどったからだった。


「ここが竜の女王の城か……」
初めて訪れたキースは、興味深そうにきょろきょろと辺りを見回している。
城の内部には、神聖な空気が漂っており、闇を寄せ付けない空気が感じられた。
「バルシドーを倒す前より、空気がきれいになってるわね」
「そうだね、なんだか澄んでる」
「あのときは、キースを探すことしか頭になかったからなあ……もうちょっといろいろ、ちゃんと聞いて回っておけばよかったよ」
「とりあえず、天界についてここの人間に聞いて回ってみたらどうだ?」

ラルドの一声で、住人に聞き込みをすることになった。
しかし、その作業は一人目の住人で完結することになる。

「天界への道は、この城の最奥から通じているはずです」
「!!!」
「この城の奥、そこには大きなステンドグラスがあります。しかるべき時が来たとき、そこから白く輝く光の道が現れ、天界に導くと言われています」
「ビンゴ! 行ってみようぜ!」
「あっ、ちょっとキース!」
「待ってってば、もう……あっ、ありがとうございました!」
「……やれやれ」
目を輝かせながら、キースは城の奥へと走っていった。その背中を追いかけながら、三人は苦笑いを浮かべるのだった。

城の最奥には、住人の言葉通り大きなステンドグラスがあった。身の丈の数十倍はあろうかという大きな装飾だ。
その後ろから、やわらかな陽光が降り注いでいる。ガラスを通して、うっすらとフロアが明るく色づいていた。が、特に変わった様子はないようだ。

「……普通だな」
ラルドが眺めながら言った。アレクとクラリスも色々と調べてみるが、別段変化はない。

「この辺に立ったら、ぴゅーんって飛ばねーかな」
「そんな適当な……」
「わかんねーぞ、ちょっとやってみ……おわっ!?」

キースが遊び半分で、部屋の真ん中に立った瞬間。突然、ステンドグラスとキースの胸元が光り輝いた。
「……!?」
キースが懐を探る。取り出したロトの印が、ステンドグラスの光に呼応するように、眩い光を放っていた。
そしてそれとほぼ同時に、アレクたち三人の視界から、キースの姿がきれいに消えた。
その様子を唖然として見つめていたアレクたち。その後も、光は衰えることなく降り注いでいる。何処かに通じているのは確からしい。
「やった! 二人とも行こう! 急いで!」
アレクは二人を引っ張り、光に飛び込んだ。

それを影から見ていた城の住人が呟いた。
「なんてことですの……! 天界への扉が……あの方たちはアルスさんの……!?」
と。
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