Chapter 11-4
重い沈黙を破り、先に口を開いたのはキースだった。

「……本当にごめん」
キースはそう言うと、クラリスの言葉を待った。しかし、クラリスの口からは意外な言葉が出てきた。

「……あなたは、一体何に対して私個人に謝ってるのかしら?」
キースは少し面食らったが、気を取り直した。
「クラリスを……危ない目に遭わせたから……あの時は謝れなかったから、今謝ったんだけど……」


パァン!!


乾いた音が響く。クラリスがキースの頬を叩いたのだ。これにはアレクとラルドもびっくりし、二歩三歩、後退りした。

キースは叩かれた左の頬を押さえて、クラリスを見つめる。
クラリスはキッとした眼でキースを睨みつけ、怒鳴り口調で言った。
「バカにしないでよ! 私はそんなに守ってもらわなきゃいけないの? 何のために一緒に旅してたのよ!」
キースは何かに気づいたように、下を向いた。
「私がケガをしたって、この旅の間、それは当たり前のことじゃない! 誰かが傷ついても、それは不可抗力、仕方ないことなの! 旅の間は、私が女だとか、そんなことは関係ないのよ!」
キースはクラリスの言葉に、ただ俯いて黙り込む。
ここでクラリスの口調が戻った。
「……あなたは責任感が強くて、いつも私たちのことを考えて動いてくれる。それは素晴らしいわ。でもね、私たちだってあなたの支えになりたいのよ。あなたを助けたいの」
「クラリス……」
「だから、約束して。これからは私をただの、一人の仲間として見て。アレクやラルドがケガしても、私がケガしても、同じように対処して。ね?」

キースはクラリスを見た。その顔は、微笑みを浮かべていた。
キースの中でも、何かが吹っ切れた気がした。目を閉じて、すうと息を吸い、吐く。そして目を開き、クラリスの顔をしっかりと見返した。
「――ああ、分かった。約束するよ」
キースは力強い声で言った。アレクが、そしてクラリスが見たその顔は、以前のようにたくましい彼の顔だった。

「もう一度言うよ……キース、おかえり」
アレクが二人に近寄る。
キースはアレクに向き直り、はっきりと笑って言った。

「ああ、ただいま!!」

ラルドは笑い合う様子を見て呟いた。
「変わったのは……俺だけじゃなかったんだな」
と。
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