Chapter 8-3
城に入ると、いきなり王のいる玉座が目に入る構造になっているサマンオサ。どうやら、王が不審者を一刻でも早く確認できるように造られたそうだということは、後に聞いた話だ。

扉を開いた三人は、すぐに王がこちらを見ているとは思っていなかったため、少しばかり面食らい、緊張感の高まるなか広間の中央へと足を進めた。

「お初にお目にかかります。旅の途中、ある目的をもってやって参りました、アレクと申します。同じくクラリスとラルドです」
「ちょっと待つのじゃ。礼儀正しいが、ちと固い。わしは固い雰囲気は好かんので、気を緩めて構わぬぞ。ほれ、もう少し近う寄れ」
王はそう言って、三人を手招きした。

「旅人たちよ、気をつけるのじゃ。最近魔物が以前にも増して凶暴になってきておる」
「はい、行く先々で魔物に襲撃されました。気をつけます」
「うむ。ところで、そなたらは何やら聞きたいことがありそうな顔をしておるな」
「あれっ、わかりますか……?」
「わしも一国の主じゃ。そのくらいのことは見通せんとな。ほれ、言うてみい」
王はそう言って笑った。
「実は、これがサマンオサの国章だと聞いて僕達は来たんです」
アレクは、懐から例のアクセサリーを取り出した。
「おお、確かにそれは我が国の章ではないか! なぜおぬしたちが?」
王は当惑した表情で三人を見た。
「ここに来る途中、スーの東の廃墟で出会った若者が落としたのです。で、私たちが拾ってきたというわけです」
クラリスが説明すると、王の声がやや大きくなった。
「若者……記憶に新しい者が一人おる! すい先日のことじゃ、南の洞窟に巣食った魔物を討った褒美にとらせたのじゃ。確か名は……キース!」

その瞬間、三人の表情が一変した。

「キース!?」
ラルドが声を張り上げる。
「おぬしたち、彼を知っているのか?」
「はい、何度か話した仲です」
クラリスは悟られない範囲でごまかした。
「そうであったか……彼は船を欲しておったゆえ、小舟を与えたのじゃ。なんでも、ここから南にあるルザミの島に向かいたいと言っての」
「ルザミ……ですか」
「お手上げだな。あんな離れ小島まで、泳いで後を追うわけにはいかん」
ラルドの言葉に、王は眉をぴくりと動かした。
「なんじゃ、そなたらはあのキースを追っておるのか?」
「はい、事情があって探しています。あっ、襲うつもりはないです。ただ、話をしたいことがあって……」
「ふむ……」
王はそう言うと、ぽんと手を打って話し続けた。
「……よし、彼の知り合いならば心配はなかろう。必ず返すという誓約で、船を一隻無期限で貸そうではないか」
「えっ! 本当ですか!?」
「うむ、彼に会えるとよいの」
「「ありがとうございます!」」

サマンオサ王の助力で船を借りることが出来た三人。
しかしこの後、船上でアレクは、ラルドから凄みある形相で問い質されることになる。
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