Chapter 8-2
昔、このスーの町は小さな村で、東には大きな街――アレクたちが旅の扉から出てきた廃墟がそうだ――が栄えていた。
その街は若者を中心とした街で、各地との貿易が盛んな商業都市だったという。

が、ある時。その町に革命が起こり、町の長が幽閉されてしまう。長は若くして獄中で非業の死を遂げ、それをきっかけに街はみるみる廃れていき、人々は次々とスーの村へ移民していった。そして現在に至るという。

「そんなことがあったんですか……」
この話を町長から聞いたアレクは、少しばかり考え込むような仕草を見せた。
「ただ、我々も数が増えてきて、これ以上この町に住むには厳しいものがある。それに、廃墟のままの街は哀しすぎる……いつか、我々の手で東の街を復興させたいと思っているよ」
「それはすてきなことですね。応援します」
町長の計画に、クラリスは笑顔で応えた。

「……ところで、ちょっとお聞きしたいのですが。これは一体何かご存知ですか?」
クラリスは袋から若者が落としたアクセサリーを取り出し、町長に見せた。すると、それを手に取り、じっくり眺めた町長は、確信に満ちた口調で言った。
「これは……間違いない。サマンオサの国章だな……」
「サマンオサ……?」
「うむ、ここから南に下っていけば、岩山にたどり着く。そこの旅の洞窟を抜けると、サマンオサが見えるだろう。この国章は国にかなりの功績を残した者にしか与えられん。だから王はその若者をきっと知っているはずだ」
「ありがとうございます。では、僕達はサマンオサに行きます」
「うむ、ただし、その前に……」
「???」

「情報料、50ゴールド」
町長がすっと右手を差し出した。

「全く、あの町長ったらちゃっかりしてるわね」
「ははは……そうだね」
アレクは笑うしかなかった。
ただ、貴重な情報を得られたことに加え、そこまで高額でもなかったので、後に尾を引かないよう対価はきちんと支払った。
「岩山……あれだな」
ラルドが呟く。大きな岩山が、姿を見せていた。麓には洞窟も確認できる。どうやら、旅の洞窟というのはあの穴で間違いないようだ。三人はそのまま洞窟の入口に向かった。

「サマンオサへ行くのか?」
入口で門番に呼び止められ、三人に緊張が走った。
「はい。スーの町から来たんですが……」
「ほう、はるばる北のスーからやって来たのか。この洞窟を抜ければサマンオサは目の前だ。あと少し、頑張れよ!」
「はい、どうもありがとうございます」
呼び止められ、門前払いを食らうかと思ったが、どうやら杞憂だったようだ。
そんな挨拶を交わして、アレクたちは進んでいった。


洞窟を無事に抜けると、門番の言うとおり、サマンオサの城下町がすぐに見えてきた。
近くに寄って驚いたのが、城下町が城の二倍ほどの大きさであることだった。といっても、王城自体がアリアハンやロマリアのそれと比べて小さく、その二倍程度ということで、全体としてみるとそこまで大規模な国ではないようだった。
このサマンオサも昔は半鎖国状態で、悪政のはばかる国だったらしい。噂は本当に色々教えてくれる。

「とりあえず最初に王を訪ねるべきだと思うが」
というラルドの案に賛同し、三人は城下町を横切り、城へと向かった。
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -