Chapter 8-1
旅の扉から出たアレク。クラリス、ラルドも続いて出てくる。

「ここは……昔誰かが住んでたみたいだ」
アレクがそう呟く。
見ると、レンガの壁や、瓦の屋根などがわずかに残っている。人が住まなくなってかなりの年月が経っているのだと考えられる。
「……あの人、誰かしら?」
クラリスが指差した先には、防具に身をまとった若者が立っていた。

「すみません」
アレクが話しかけると若者が振り向いた。頑丈そうな鉄仮面を身に着けており、顔がわからない。
「……何だ」
くぐもった声が、仮面の下から聞こえた。
「ここには昔、誰かが住んでたんですか?」
「……さあな。俺も立ち寄っただけで詳しいことはわからん。何か知りたければ北西のスーの町に行くと良い。何か情報があるかも知れんぞ」

そう言うと、若者は去って行った。そのとき、アレクは足元で何かが光ったのを見た。
「あれ。あの人、何か落として行ったよ……」
アレクはそれを拾い上げると、袋に入れた。
「今度会ったら、返さなくちゃね」
「ええ、そうね」

世界地図を開いてみる。スーの町に行くには、何度か川を越えねばならない。しかし、彼らに船は無い。かといって、泳いで渡れるほど小さい川でもないらしい。
「いかだを作ればいいんじゃないか」
とラルドが提案した。
具体的な方法はこうだ。木を剣で切り、それらをまとめる。そして、結びつけて浮かべて終了。実にシンプルな力作業である。
幸い、辺りには木が生い茂っており、紐の代わりになりそうな、丈夫な蔦もある。材料に困ることはなさそうだ。
「よし、それじゃやるわよ!」
クラリスは少しやる気だった。彼女を筆頭に、三人はいかだ作りに取り掛かった。

……それから三時間後。

「できた……」
「疲れたわね……」
「……思ったより……重労働だったな……」
息も絶え絶えに、三人は急ごしらえのいかだに乗り、なんとか川を越え、スーの町にたどり着いた。いかだはその役目を無事に果たし、最後に越えた川でばらばらになり、下流に流れ消えていった。

町に着くなり、三人は宿を求めた。それ以外のことが頭に浮かばないほどに、彼らは疲弊しきっていた。
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