「別に私が手伝わされるのはいいんだよね、こういう仕事嫌いじゃないし」
ぱちん、とホッチキスで書類を留める音が2つ、3つ。呼び出されたと思えば生徒会の先生にたのまれたのだ。私たちは生徒会ではないのに。そして、かちかちとボタンの音を鳴らしながらゲームをしてる音が2つ。まあゲームをしているのは言わずもがな千鶴と祐希なんだけども。ちなみに要は今文化祭の話し合いとかなんとかで先生に呼ばれているので不在だけれど、さぼりはよくないということで。
「呼ばれたんだしなんかしなよー、要きれるよー」
「そうですよ千鶴くんに祐希くん、みんなで終わらせましょう?」
「えー今いいとこ」
「ちょっと祐希ー、それPSPじゃん切っても電池切れない限りセーブデータは消えないっしょ、てかなんのソフトやってんの、モンハン?」
「そうですモンハンです」
「ってか、もしかしてもしかして冬子もPSP持ってんの!?」
「持ってるけど持ってきてません、ほーらーホッチキスで留めるだけだからみんなでやった方が早く終わるってだからはやく!」
3人がかりでやっても山のようにある書類のやっと3分の1が留め終わったくらい。この調子じゃあまだまだ時間はかかるだろう。だからゲームするなら彼等に手伝って欲しいに決まっている。
「…あーあ死んだ、千鶴のせいだ」
「俺のせいじゃないじゃんゆっきーが悪いんでしょ!!」
「うっわー責任転嫁ってやつですか」
いつものごとく言い争いというか、とりあえずそれを始めた祐希たちに私は呆れたようにため息をつく。そしてまたひとつ資料をホッチキスで留めた。
「大変だね冬子も」
「そう思うなら止めてくださいなお兄さん」
「無理」
「即答かーい」
「でも、確かに仕事をしないのは良くないですよね…」
「だよねえ、要早く帰ってこないかなー、しぼられちゃえばいいのに」
私がそう呟いた途端にがちゃ、と生徒会室のドアが開いた。みんなしてそちらの方へ首を向ける。噂をすればとはまさに。要がまた片手に何枚かの資料を手に戻って来たのだ。そしたら祐希と千鶴は咄嗟に持っていたゲーム機をポケットの中に。くそうあいつら。と思ったけど要は彼らが何か隠したのは見えていたらしく、眉根を寄せた。
「おい」
「何」
「今何か隠したよな」
「気のせいじゃないの?」
「おいこっち見て言えよ」
「もーう駄目だなあゆっきーは、それじゃあゲーム持ってるのばれちゃうじゃん」
「…いや、一番駄目なの千鶴でしょ」
あ、と。今気づきましたという感じで千鶴は口元を押さえた。けど先ほど発した言葉はしっかりと要に届いていて、要はというとお怒りの様子で、ボキボキと指を鳴らしていた。千鶴はやっぱりあまり頭がよくはないみたいだ。
∵
「くっそーまた殴られた…」
「馬鹿なんじゃん?」
「冬子最近俺にひどくね!?何か恨みでも…」
「強いて言うならば仕事をしなかった事かな」
「うっ、そりゃあそうだけど」
ぱちん、ぱちんと資料をホッチキスを留めていく音が5つに増えた。あれから祐希と千鶴は要に頭をグーで殴られ、ようやく渋々と資料の整理を手伝い始めた。さすが人数が増えると作業も速く進んでいく。ちなみに要は何か書き物があるようで、先ほどから何かをカリカリと記入しているようである。そしてちょっとしてから私たちの作業もようやく終わった。
「要っちなにしてんのー?」
「うるせえ邪魔すんな小ザル」
「きゃっひどい!いつからあなたはそんなに冷たい男になってしまったの…!?」
「あーあー要泣かしたー千鶴奥さま泣かしたー」
「うるせえ冬子!お前も微妙にのってくるんじゃねえよ」
「なんか楽しそうだったから」
「てかゆっきー珍しくのってこないよねどしたの?寝てんの?寝てんのゆっきー?」
「えー何ー…?」
「邪魔しないであげましょうよ、きっと疲れてるんですよ祐希くんも」
「まあゲームばっかしてるだけだけどね祐希の場合は」
「お兄さんがこう言うんだから間違いないよねえー」
「…まあ、そりゃあゲームも日常生活の一部ですから」
「それじゃ駄目だろ」
「あらー、てか起きたんすね祐希」
「ここは言わねばと思って」
「そんな重要なことでもなかったけどね」
「あ、そう言えば要くん書き物終わったんですか?」
「あー、もうちょいだな」
「なーにやってんだよ要っちい!仕事しないと駄目だぞう!」
「お前はサボってたくせにか?」
あ、千鶴死亡フラグ。