sweet eyes  




白磁。そう呼ぶに相応しい肢体を惜しげも無く晒した状態のまま、恋人はベッドに寝転がっていた。腰にタオルを一枚巻いただけの姿で眠る彼は、俺がここに来ることなんか勿論知らないから当然と言えば当然だけど、ひどく無防備で隙だらけ。かれを見ている時の心情を何かに例えるなら、そう、あれだ。自分の誕生日ケーキを、皆で分け合って食べる前にひとくちだけ味見したくなるあの感じ。込み上げてくる感情は、フォークや皿を準備してる間、台所に置きっぱなしの白いケーキを目の前にしている時の高揚感と背徳感にひどく似ていた。
食べてしまいたいと言う欲望に抗えず、つぅ、と白磁の頬に触れる。

「ん、」

鼻から抜けるような、彼の甘い声が俺の耳殻をなぞる。じりじりと体内で熱が燻りはじめて、欲望に火がついたのがわかった。我慢と言う言葉を辞書に載せない主義の俺は、本能の導くまま、べろりとしろい首筋を味見する。人間に味なんかないはずなのに、彼の肌は脳みそまで溶かしてしまいそうなくらい甘かった。

「……? とう、や」

どろり。目覚めたばかりで焦点の合わない糖蜜色の瞳が、不思議そうに俺を捉えた。長い睫毛に縁取られた瞼は重たげに開閉するばかりでなかなか開ききらない。その姿があんまりにも可愛いくて、彼の額にキスを落とすと、ゆるゆるとふるえるばかりだった瞼が驚いたように開いた。

「なっ‥‥トウヤ!?」
「こんばんは、グリーンさん。こんな格好のまま寝てたら風邪ひきますよ」
「え? ……あ、俺いつの間に寝てたんだろ」

晒された身体に目を遣って溜息を吐いたくちびるにキスをする。ほぼ衝動任せなその行動に、彼はきょとんと目を見開いてから、覆いかぶさる俺を呆れたように見つめた。

「お前……なんでこんなとこにいるんだよ」
「今日はジムに泊まり込みだって聞いたんで、来ちゃいました」

ちゅ、とさっき味見した部分にキスマークをつける。小さく肩を揺らして敏感に反応する彼が、寝起きで涙の溜まった目のまま俺を見上げてくる(睨むとも言う)から、調子に乗って鎖骨の辺りにもくちびるを落とした。赤い痕を散らすのを嫌がる彼が俺の肩をぐいぐい押し返してくる。かわいいなあと思いながら構わずキスし続けていると、渾身のチカラで引き剥がされた。

「……ぁ、っは……どけっ!」
「やです。グリーンさんがそんな無防備な格好で寝てるのが悪い」
「…って、おまえくるなんて、知らなかったし! 」
「俺が来るってわかってたらこんな風にならなかったって、本気で思ってる?」
「……う」

返す言葉に詰まった正直な恋人が、むくれながらふい、と目を逸らす。かわいいなあ、なんて、言ったら絶対怒られるだろうから言うのを躊躇ってたけど、もうだめだ。

「……かわいいね」
「なっ! かわいくねえよ!」
「ねえグリーンさん、したい」

いつもよりちょっとだけ低い声でそう言えば、潤んだ瞳はあっさり揺れて。拒まれるのが嫌いな俺は、いいともだめとも言われる前に、彼の素直じゃないくちびるを塞いだ。

***

全身くまなく触れられて、息する間もなく身体の奥の方を強引に掻き回されて。強烈すぎる快感に息が詰まる。ひっきりなしに喘ぐ俺をかわいいかわいいなんて宥めながら、それでもトウヤは優しくしなかった。いつもは余裕綽々とばかりに光るビターチョコレートと同じ色の瞳も、今日はギラギラして余裕なんてなさそうに見える。目だけじゃなくて、ナカで大きくなる熱も荒い吐息も滴る汗もぜんぶ、俺のせいなんだなあって思ったら、嬉しくて自然と頬が緩んだ。

「ふ、今後ろきゅって締まったよ。なに考えてたの」

くすくす笑ってトウヤが俺を見る。そんな事言われたらナカのトウヤを意識して、また締め付けてしまう。締め付けることでトウヤの熱の大きさや形がまざまざと分かって、こんなでかいのが俺の中に入ってるんだって思ったら、背筋にぞくぞくとした快感が走った。

「ひあっ……!」
「っ、そんな締められたら、動けないよ」
「や、んんっ、ぁ、ふああっ」

動けない、とか言いつつも抉るように突き上げてくるトウヤのせいで、目からも俺自身の先っぽからもぱたぱたと雫が零れ落ちる。がくがくと揺さぶられる身体はそれだけで許容量オーバーなのに、あろうことかトウヤは挿れる前に散々いじり倒した乳首にゆびを伸ばした。

「っやあ!ひ、んん……め、だめ」
「だめ? グリーンさんここ弄られるの好きじゃん。後ろもきゅんきゅんしてるけど?」
「っふあ!」

左手で乳首をくにくに弄りながら、トウヤが右手の中指で俺とトウヤの繋ぎ目をなぞる。ひくひくと気持ちよさに跳ねる身体は俺にはもうどうにもできない。意地悪な言葉にさえじゅくんと下半身が疼いてしまうことが恥ずかしくて視線を逸らすと、トウヤは乳首を弄っていた左手で顎を掬い取って、無理矢理視線を絡めてきた。とろ、と揺らぐ焦げ茶色の目が、俺をじっと見つめる。居た堪れなくてぎゅうと目を瞑ると、目尻を舐められる感覚がした。

「グリーンさん、涙はしょっぱいね」

瞳は甘そうな色のくせに、なんてトウヤの言葉に思わず反論する。

「おま、え、だって、チョコレートいろのくせに」

なめると甘そうで、見てるだけでとろけそうないろしてるくせに。

「おまえのがあまそうだ……ふあっ!?」

どくん。体内で脈打つトウヤの熱が、一回りほど大きくなった。ただでさえキツイのに、さらに余裕がなくなる。涙目のままトウヤを睨むと、俺を見るチョコレート色の瞳はどろどろと融解して、俺を内側から溶かそうとしているみたいに熱を孕んでいるのが見えた。

「グリーンさんのばか。もう優しくなんてしてあげれないから」

聞いたこともないようなトウヤの声が鼓膜を震わす。弱い俺は、それだけでもう残り少ない理性を手離してしまいそうだ。本能の片隅に何とか引っかかった理性の切れ端を掴んで、トウヤの首に腕を回す。ぐい、と引き寄せた耳に落としたのは、俺が考えうる最高級の誘い文句だった。

「優しくしてほしいなんて、誰が言った?」

どろり。
理性がとろける音がする。


sweet eyes


ねえ、どこまで溶かしてくれんの?

******
そんな訳で1000hitリクエストの黒緑甘エロ、です。
……甘くもなければエロくもないとかほんとすいませんごめんなさいうわあああん!


びっくりするほど萌えがなくてすいません…。前もこんなん言ってましたね。
トウヤ君が残念でグリーンさんもがっかりで申し訳ない……(´;ω;`)
かっこいいトウヤ君とか書けませんでしたorz


折角すてきリクエストいただいたのに活かしきれなくてごめんなさい(>_<)
書き直しの方は拍手にて受け付けておりますので、気に入らなければどうぞお申し付け下さい!


ではでは、最後になってしまいましたが、あてにゃんリクエストほんとにありがとうございました!(*^o^*)




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