教えてリリィ!  






諭すようにそう言われた。

「僕はね、グリーンが嘘をつくのは好きじゃないよ」

知ってる。
レッドの好きなもの、嫌いなもの、ぜんぶぜんぶ知ってる。だって生まれてこの方離れたことなんかないんだ。俺の作ったオムライスが大好物だってことも、コーヒーみたいな苦いものが嫌いなことも、毎日一緒にいるうちに自然と覚えた。
だから俺のことを誰よりも思ってくれるレッドが、俺がわるいことをするのを嫌うのだって分かってる。だけど……。

「ぜえぇぇったい、ダメっ!」
「えー? グリーンのケチー。いいじゃん、付き合ってるって言いふらすくらい」
「よくないっ! 何がケチだこのバカ! 考えてもみろ、俺たち女同士なんだぞ!?」

昨日、俺は念願かなって幼馴染のレッドと付き合うことになった。が、実は俺もレッドも女で、俺たちは一般的に同性愛と名付けられた関係なのだ。
それで、「世間体が気になるからこの関係を秘密にしたい」という俺の意見と、「言いふらしたい」なんて訳のわからないレッドの意見が対立して、付き合いだして一日目なのに早くも朝から言い争い中。レッドは俺の意見をまったく聞かないし、俺もレッドの意見を受け入れる気にはとてもなれなくて、もう30分くらいこの拮抗状態が続いている。

「っ、大体お前なあ! 誰に言いふらすつもりなんだよ!? まさか姉さんに言うつもりじゃないだろうな!」
「あー……ナナミさんは、もう気付いてるかもだからなあ……」
「え、なんだそれ。 昨日付き合うことになったばっかなのに!」
「何泣きそうになってるの。だいじょぶだよ。ナナミさんは同性愛とかに偏見持つ人じゃないでしょ」
「そ、だけど」
「だから泣かないの。僕、グリーンに泣かれると弱いんだから」

レッドが優しく俺の頬を撫でた。俺に向けられた柔らかい微笑みに、胸がどくどくと高鳴る。さっきまでレッドのことを怒ってたのに、こんな笑顔で見つめられたら怒れない。

「……グリーン?」

黙り込んだ俺を不思議に思ったのか、レッドが距離を詰めて俺の顔を覗き込んだ。どんどん顔に熱が集まるのが分かって、 慌てて目を逸らした。

「な、なんでもねーよ!」

不甲斐ないことに、俺は『恋人としてのレッド』との距離感がまだ掴めずにいる。恋人だって意識すると、ただ甘えるだけなのに普段より恥ずかしさ倍増で、ついついツンツンした態度をとってしまうのだ。こんなんじゃだめだと思うのに、レッドの仕草にいちいちドキドキしてうまく喋れない。

ただでさえ素直じゃないのに、それに拍車がかかった今の俺じゃレッドに嫌われるかも、なんて考えが浮かぶ。嫌な想像は巡り出すと止まらなくて、不安でいっぱいになった俺をレッドは驚いた目で見つめた。

「え、なんでまた泣きそうになってるの」
「だって、レッド」
「……そんなに言いふらされるのいや? 」
「いや、やだけど、違くて。……レッドは、俺がこんなでも好きなの?」
「こんなって? 」
「す、素直じゃねえし、可愛げもねえし、折角両思いになったのに恥ずかしくてレッドの顔も見れねえし、もうさいあくじゃん!」
「……」

俺の言葉を聞いたレッドが急に怖い顔になる。怒ってる、みたいな……?

「グリーン」

怒ってると言うか、焦ってると言うか。とにかく聞いたこともないような声色で呼ばれた名前に怖くなった俺は、思わず目をぎゅっと瞑ってしまった。

「……据え膳てこと?」

イラついたようなレッドの声が聞こえる。一層固く目を閉じた次の瞬間、肩に体重をかけられて床に引き倒された。驚いて目を開くと、レッドの白い腕が俺の顔の横にあるのが見える。目の前には、綺麗な黒髪を垂らしてこっちを見ているレッドがいた。

「え、なに」
「何って、押し倒してるんだけど」

呟きに不機嫌全開で返されて、何を言えばいいかわからない。困惑と動揺でわたわたする俺に、しかめっ面のままレッドが言った。

「僕がさあ? どれだけの根性でもって、この年まで我慢してきたと思ってんの。グリーンのぜんぶが好きで、大切にしたくて、ようやく昨日言ったんだよ。好きだって」
「レッド……」

そんな風に思っててくれてたなんて、知らなかった。レッドのことは何でもわかってる気でいたけど、とんだ思い違いだったみたいだ。
レッドの気持ちも考えずに、俺が勝手に不安になってたから、レッドは怒ってたんだろう。そう気付いて、すごく申し訳ない気持ちになった。

「……ありがと。不安に思ったりしてごめん。俺も、す、好きだよ!」
「グリーン……」

レッドの瞳が和らいで、怖い顔がだんだん元の優しい笑みに戻っていく。許してくれたのかなと思ったのに、レッドは俺に覆いかぶさったまま動かない。

「れ、レッド……?」
「なあに、グリーン」
「あの、いつまでこの体勢なんだ?」

にこにこ微笑んだレッドに聞くと、「グリーンが悪いんだよ」なんて答えが返ってくる。

「僕の前であんなかわいい顔して、僕を煽るようなこと言って、挙句目も閉じちゃうし、据え膳食わぬは恥かなって」
「……は!?」
「言ったでしょ、我慢してたって。グリーン初心なとこあるし、僕の事をもっと意識してくれるまで待とうと思ってたけど、やめる」
「そ、れはどういう」
「今すぐグリーンが欲しいってこと」

にっこりと笑ってそう言ったレッドは、ちゅ、と触れるだけのキスを俺のくちびるに落とした。笑顔は笑顔でも、レッドの微笑みはさっきの天使みたいな可愛いものじゃない。肉食獣そっくりな笑い方。女子のくせにオスみたく笑う恋人に、俺は何も言えなかった。開いた口が塞がらない。

何か言おうと思うのに、言葉が浮かんでこないせいで、くちびるが震える。そこに音は行き来しなくて、ただただ息が行ったり来たりするだけだ。

じっと俺を見つめるレッドの視線がいたたまれなくて、じわじわと頬が熱くなってくる。赤くなっているだろう顔を隠したくても、身体はさっきのキスのせいで痺れたみたいにびりびりして動かないし、何でかわからないけどレッドから視線を逸らせない。呼吸がだんだん浅く、荒くなっていく。レッドはそんな俺を見て、苦しげに柳眉を顰めた。

「っ、あんま、煽んないで」

融けた黒の瞳が揺れる。再びくちびるに触れた熱は、またすぐに離れていった。

「言いふらされるのがいやなら、僕のグリーンだって証を刻みつけることくらいさせてよ」

レッドのくちびるが今度は首筋に下りる。思い切り喉元を吸われて、びりっと甘い痛みが走った。赤く痕がが残っているだろうそこをぺろりとレッドの舌がなぞったせいで、俺の声じゃないみたいな鼻にかかった声が漏れる。耳を塞いでしまいたいのにレッドに押し倒されてる状態ではそれもかなわなくて、仕方ないからレッドを力尽くで引き剥がした。

「っん…れっ、ど」
「なあに?」
「これ、なに?」
「……マーキング?」
「疑問形なのかよ……」
「あはは、だってセックスって言ったら怒るでしょ」
「セッ……!」

え、は?
そら怒るだろってか待て、どういうこと?
俺たちまだ付き合ってから一日しか経ってないし、そもそも女同士だし、可愛いレッドのくちからせ、セックスって……!

「マジ、で?」
「うん」
「おんなどうし、だけど」
「だいじょぶ。できる」
「……早くね?」
「だから、何回も言うけど、僕はずっと我慢してきたんだってば」

それに、とレッドのくちびるが蠢いた。思わずごくり、と唾を飲み込む。俺の反応にくすりと笑ってから、レッドは俺の耳元に顔を寄せて、とびきり優しいこえで囁いた。

「今回は、僕を煽ったグリーンが悪い」

そう言って可愛らしく小首を傾げるレッドにうっかり見惚れてしまい、すっかり反論のタイミングを逃した俺は、甘ったるいキスの雨と白くて細いレッドのゆびに抗う事が出来ずに、結局レッドに流されることになるのだった。

その後、行為に味を占めたレッドのせいで、俺が週5の割合でベッドに沈むことになるのはまた別の話。


教えてリリィ!


ひみつの恋はどんな味?

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そんな訳で1000hitリクエストのゆり赤緑、です。
うわああああなんだこれ長くてうざいだけでごめんなさい!

自分でもびっくりするほど萌えがない文章になってしまって申し訳ないです。しかもエロwktkしてたのに書けなくて悔しい…! やはり千早にエロはむりでしたorz

色々と至らないところの多いお話ですが、受け取って下さると嬉しいです!(*^^*)
拍手でコメントしていただければ勿論書き直しもしますので! 気に入らないようでしたらぜひコメントください。

ではでは、最後になりましたが、のいさん、リクエスト本当にありがとうございましたーっ!ヾ(@⌒ー⌒@)ノ






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