※一人暮らしのグリーンさんの所へ、レッドさんが遊びにきました! な現代ぱろ。高校2年生くらい。



それは、扇いでも扇いでも一向に涼しくならないとある午後のことだ。

「あぢぃー!」

扇ぐ努力も捨てたグリーンが、うちわを放り投げて叫ぶ。僕もグリーンもタンクトップに半ズボンという脱げるだけのものを脱いだ最終形態をとっているのに、何でだろう、クソ暑い。その上グリーンが暑い暑い言うから、体感温度が5度くらいプラスしている気がする。

「……言うと余計暑いよ」

うんざりして言ったら、グリーンもうんざりした顔になった。

「でも『寒い』とか言っても別に涼しくなんなくて虚しいだけだろー? あーもー何でこんな時にエアコン壊れんだよー!」

その通りだ。すべてはグリーンの家のエアコンがぶっ壊れて現在修理中、つまりは使用できないこの状況が悪い。何がどうしてそうなったんだか知らないけど、何でも特殊なパーツが壊れたせいで、取り寄せ含め修理は8日間かかるそうだ。運悪くそんな時に遊びにきた僕は、こうして汗だくでこのクソ暑い部屋に、グリーンと一緒に寝転がっている。何でこんなことになっているのか。不幸の元凶は母親が出した「今日から節電! クールビズ!」という謎の宣言にあった。

僕だって、我が家が涼しければ遠路はるばるここまで来ない。それでも焼け付くような日差しの中チャリで30分かけてここまで来たのは、グリーンの家ならこの暑いのにエアコンが付けられない我が家よりは絶対にマシな環境だろうと思ったからだ。まさかグリーンが僕と同じ目に遭っているとは思わなかった。

「ほんとタイミングわりーなあお前」

力なくグリーンが笑う。
畳に汗がじわじわと染み込んでいくのを横目で見ながら、僕は家主に水を要求した。

「喉かわいた」
「あーそだな。水飲もうっつかアイス食おう」

ゆらり、と陽炎のように起き上がってグリーンが台所の方へ消える。何となく外へと目をやると、全開の窓から入ってくるのは涼しい風でも生ぬるい風でもなく、うるさい蝉の声だけで、余計暑くなった。視線を逸らしても聞こえてくる声は最早公害だ。

「レッドー、お前バニラとソーダとどっちがいい?」

台所の方から聞こえてきたよく通る声に、ソーダと答えて目を瞑る。何だか眠い。うとうとと意識が下の方を彷徨う。あれ、なんだろ、ほんとに寝そう。

「……こんな気温の部屋でよく眠れんな」

ひた、と冷たいものが頬に触れて目を開けると、呆れたような顔のグリーンが僕の頬にソーダアイスをくっつけていた。今食わないんなら仕舞うぞ、と台所に向かおうとするグリーンを、手首を引っ張って引き止める。

「食べる」
「ん。早く食わねーと溶けるぞ」

ひやりと心地よい温度のそれを起き上がって受け取る。何となく彼の指先に摘ままれているもう一つの袋を見ると、既に少し中身が溶け出していた。

「グリーン、それ、もうやばいんじゃない」
「え? うわっ! やっべー!」

慌てて袋を開けて中身を取り出す姿を可愛いなあと思いながら、ソーダアイスを一口齧る。口がさっぱりして、大層うまい。

グリーンはと言うと、舐めても舐めてもどんどん溶けていくアイスに苦戦していた。

「うえ……もうやだー。ベタベタ」
「暑いから溶けるスピードが尋常でないね」
「その割にお前すげー綺麗に食べてんじゃねーか……」
「いや、ベタベタだよ? グリーンのはバニラだから見えるけど、ソーダは溶けてもわかんないし」
「そっかなあ……?」

言いながら真っ白な棒アイスを食べるグリーンは可愛いを超えて最早エロい。よろしくない。

「グリーン、食べ方エロいよ」
「アイスは舐めて食うもんだろ」
「棒アイスはアウト」
「アウトってなんだよ」

呑気に話していたら、ぼとり、と嫌な音がした。腿が冷たい。まさか。

「落ちた……!」

腿の上、どろどろと気持ち悪いのはさっきまで清涼感を与えてくれたソーダアイス。あーあ。
グリーンに気を取られていたらとんだ目に遭った。

「フジュンなこと言ってるからだ」

笑いながらそんなことを言うグリーンも、だらだら溶けるアイス相手に必死だ。すっかり白く汚れた手は、どうしてもエロいことを思いださせる。暑さでふわふわした思考は、糸の切れた凧のように留まることなく飛んでいって、妙な結論へと辿り着いた。

「ね、グリーン、それ分けて」
「ふあ?」

残り少なくなったアイスを、棒を持った手ごと自分の口元に引き寄せる。グリーンが不思議そうに僕を注視しているのを確認してから、見せつける様に、零れ落ちる白を舐めとった。

「っあ、レッド!?」

白く汚れた指に、丁寧に舌を這わす。ソーダアイスとは違う濃厚な甘さにくらくらしながらそれを続けていると、手を引っ込められた。

潤んだ瞳で僕を見ながら、グリーンは荒い息を吐く。

「エロいのは、お前だろ、ばか!」

指を舐められたくらいで喘ぐグリーンの方がよっぽどエロいのに、何を言ってるんだか。

「どっちがエロいか、試してみる?」

試して見るまでもないけど、と続けるはずの僕の口の中に、棒アイスが突っ込まれる。それを引き抜かれた直後に絡められた舌は、濃厚なバニラの味がした。


蜜度100%


真夏の君は目の毒です。



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そんな訳でクソ暑いのにいちゃいちゃする赤緑の話。
レッドさんとグリーンさんは高校から別々のとこ通ってるんです。故にグリーンさんは交通の便がいいアパートに住んでます。一人暮らし。時々お姉ちゃんがきて家事とかやっといてくれるけど、大体の家事はひとりでこなすグリーンさんとか萌え。

男子高校生の思考って何でもエロいことに直結するっていうけど本当なのかしら。


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