ぶっちゃけムカつくんだよなー、とゴールド君。

「今日の午前中さあ、ヒマだったからグリーンさんとこ行ったんやけど」

タルそうな口調でそこまで言って、ゴールド君は一息にコーラを煽った。なんだかんだで先輩たちを好きな彼が、なんだかんだで尊敬しているグリーンさん関連で不機嫌になるなんて珍しくて、興味本位で訊き返す。

「ジム?」
「いや、家。でさあ、例のごとくレッドさんおったんやって」

そりゃいるでしょーと答えるあたしに知っとったけどさーと口を尖らせて返事をするゴールド君は、缶を振って中身がないことを確認すると元の位置に置いて、上半身を机にべたりと乗っけた。ぬるい息を吐きながら伏せる姿は暑さでバテてる犬みたいで面白い。(最近結構暑くなってきたから、あながち間違いな比喩でもないはず。)
一人で納得している間に、不服そうにむくれたゴールド君の口が開いて、言った。

「行く前からいる気はしとった」
「じゃあいいじゃん」
「でもさあ、あのバカップルの行動までは予測出来んやん」
「え! 今日は一体どんなことが!?」

思わずテンションが上がったあたしに、彼が楽しそうに言う。

「さっすが腐女子」
「もっとほめてくれても構わないよ!」
「えー」

机に張り付いたまま、ゴールド君が笑った。
ゴールド君はぬるいコーラみたいな笑い方するよねえとあたしが言うと、うっせ! と笑い混じりの返答。あたしの言葉に反応したのか、ゆっくりと、それはそれはタルそうに起き上がったゴールド君は、あたしの思っていた通り、ぬるいコーラみたいな笑みを浮かべていた。

「で? 今日はどんな萌えを提供してくれるのかしら!」
「萌えっつーかさー……うん」

視線が逸れる。と言うことは、男の子にはかなり話しにくい内容、つまりは私にとってかなりオイシイ情報だろうってコトネ!

「えー! 何それ? 何があったの?」
「いやまあ? グリーンさんち行ったらレッドさんおった言うたやろ」
「うん」
「で、グリーンさんが俺の分の飲み物用意してくれとる間に、間違ってレッドさんがグリーンさんの飲んどったヤツ飲んだん」

うわあ……と思わず声が漏れる。何事にもあまり頓着しないレッドさんなら、人のだと分かってても普通に飲んじゃいそうだ。申し訳ないけど、大体想像がついちゃう。

「そこへグリーンさん帰ってきて『ちょ、それ俺の!』言うて怒るんよ。まあフツーに。で、そっからだ」
「うん早く!」
「はいはい。で、レッドさんが『あ、間違った』とか平然と言うやろ? こーゆー時はグリーンさんが『ばかあっ!』ってなって終わるパターンがほとんどじゃん。なのに今回は違くてさあ? レッドさんが『間接キスだね』とかってグリーンさんに微笑んで、グリーンさん真っ赤になるって新パターン。俺の前だから怒るかと思いきや本気で照れ出して、マジどうしようかと思ったわ」

遠い目をしてゴールド君は語る。なるほど、バカップルッぷりを目の前で見せつけられてきたと、つまりはそういうコトネ。いいなあ、あたしがガン見したかった!

「お疲れ様そして萌えをありがとうゴールド君!」
「いやほんとに何か疲れた……」

乾いた声でゴールド君が答えた。なんだかほんとに元気がない。
こんな風に憔悴しきったゴールド君なんて滅多に見ないから、ついまじまじと観察してしまった。憂いを帯びてる表情は、いつもよりちょっとかっこいい。不覚にも、少しドキッとする。しかしそんな疲労マジックは、口を開いた途端にとけてしまった。

「……あの人達さ、べろちゅーとか、果てはその先とか、全部経験済みなのに、何で今更間接キスで照れんの? わっかんねえー!」

頭を抱えていつものように喚くゴールド君は、うんざりした顔をしている。バカップルのいちゃいちゃを間近で見て、相当疲れたみたい。気温が高かったこともあって、余計イライラしたんだろう。

「グリーンさんは初心なとこあるもん。仕方ないんじゃない?」
「まあグリーンさんは仕方ないにしても……レッドさんめ! いや、やっぱ二人に、『居場所のねえ非リア充感を切々と味わった俺の気も知らないで、いちゃいちゃすんなバカップル!』……って、膝を詰めて説教してやりたい」

ぺちゃり、とまたゴールド君が机に伏せる。バテる犬、再びだ。
まあこの暑いのにいちゃいちゃベタベタしてるバカップルを見てきたんだもんね、そりゃバテるか。

「うんうん、ほんとお疲れ。情報料てことでコーラ奢ってあげるから元気だして!」
「まじ? さんきゅー!」

うつ伏せのままで応えたゴールド君のためにあたしがコーラを買って帰ってきたときには、ゴールド君は疲れていたからか爆睡していて、起きた頃には結局コーラがぬるくなっていた、と言うのはまた別の話。


オーバーヒート


暑い、暑い、暑い。
特に先輩と言う名のリア充付近は、猛暑です。

******
後輩組から見た暑苦しい先輩方の話。
夏の赤緑→くそ暑いのにいちゃいちゃしそう→くそ暑いからいちゃいちゃしそう! ってオーバーヒートした脳が叩き出したのが始まりでした。

暑いときリア充見るとイライラするよね! 赤緑なら年中眺めていたいですけれども!



戻る

「#お仕置き」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -