分かれ道


「こんな時間に子供が何してんの?」

突然、背後からかけられた声に
レイはチヒロを背後に庇うようにして
すごい勢いで振り返った。

「・・・いや、そこまで
身構えてくれなくてもいいよ。」

自分たちよりもまだ年上だろう、
16、7歳に見える青年の目は
透き通るような灰色をしている。
買い物に行っていたのか、
彼の両腕に抱えられた紙袋からは
バケットの先が顔を出していた。

「それで、君らは何してんの?」

「なんでアンタに言う必要があるんだよ。」
威嚇するように言えば、
青年は困ったように笑った。

「君ら、この町の子じゃないでしょ?
最近、物騒でねー・・・ついこの間から
夜間外出禁止令ってのが
出されてるんだよ。」

「・・・だから、なんだよ。」

「だから、行くとこがないなら
うちにおいで。
もうすぐ日が暮れるから、
話は家に着いてから。
怪物に喰われたくないだろ?」

青年はそう言うと、
歩きだしてしまった。

「・・・レイ、あの人、
悪い人じゃなさそうだよ。」

「あぁ・・・どうする?」

たしかに、彼が悪人なら
今頃、自分たちはどこかへ
無理にでも連れていかれているだろう。
しかし、彼はあくまでも
自分たちの意思でついて来いと言った。
無理強いはしなかった。

「今日だけでもお邪魔しようよ。
お金もないし、
怪物に食べられたくないし、
それに・・・僕、お腹すいちゃった。」

「・・・うん、俺も。」


ひらひらと青年が歩くたびに
そのコートの裾が揺れる。
その後ろを追うように
少年たちは歩きだした。


「ただいまー。」

大通りから少し奥に入った場所に
青年の家はあった。
灯りがついている辺り、
他に同居人がいるようだ。

「おかえり、遅かったね。」
奥から出てきたのは、
深い藍色の大きな瞳に
深緑の髪色の少年だった。

「はい、これ。
あと、今日のお客さん。」

青年は紙袋を少年に手渡しながら、
こちらへと振り返る。
少年に軽くお辞儀をして、
一歩だけ家の中へ進んだ。

「ふーん・・・ま、別に
誰でもいいんだけどさ、
怪物に食べられたくないから
とりあえず外に光が漏れないように
玄関の扉、早く締めといてね。」

少年はそれだけ言うと、紙袋を持って
奥の部屋へ行ってしまった。
言われたとおり、レイは
玄関の扉を閉める。

「あ、ついでにカーテンしといて。」

ひょっこりと奥から顔をのぞかせて
少年がそう言ったので、
また言われるままに
彼は厚手のカーテンも閉めた。

「ナズキ、今日の晩御飯は4人分な。
あと、二人はこっちに座って。」

「あ、えっと・・・」

「大丈夫。知りたい事は全部教えるよ。
まぁ、俺らの分かる範囲でね。」


青年はそう言うと微笑んだ。
チヒロとレイは
安堵したように溜息をこぼし、
言われたとおり、椅子に座った。



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